国外での業務や暮らしにおいて、通信回線の確保は不可欠です。ジャカルタの ITインフラ事情についてしっかり把握しておきましょう。
クラウド化について行けないITインフラ
ジャカルタの街を歩いていると、多くの市民がスマートフォンを使っているのを見かけます。「あれだけ多くの人々がスマホを使っているのだから、通信ネットワークはしっかりしているのだろう」と思ってしまいます。しかし実際には、スマホの利用者が増加している一方で、固定回線の品質は想像以上に悪いのが現状です。
近年、ジャカルタに進出している日系企業の中には、本社などとPCの環境を共通化させるため、クラウドコンピューティングを使ったマイクロソフトの「Office 365」を使う動きが広がっています。ところが、現状のインドネシアのITインフラでは「Office 365」を快適に使うことが難しい時間帯があります。
各キャリア(ISP)では、ネットワークのラインを「太らしたい(= ネットワーク帯域を増やしたい)」と考えていますが、なかなか実現しません。その一方で、ジャカルタでは現在、道路や鉄道といった 交通系のインフラ整備が進められているため、「地下ケーブルの掘 り起こし」により回線が切れることもしばしば起こっています。
掘り起こしでの事故が起こるのは、道路の地中に何が埋まっているかの情報がないためだとされます。
一旦事故が起こると復旧まで時間がかかることも、顧客の不満を増幅させている。掘り起こしによ る断線の場合には復旧まで2〜3日かかることもあるほか、交換機の故障でも平均1日半以上待たないと元に戻らない。
品質に比して料金が高い
回線の質が悪いのに、インターネットの利用料が極めて高い のもまた頭の痛い問題です。
企業用の1Mbps光アクセス回線 が1カ月当たり数百ドルします。ちなみに日本の家庭用光アクセス回線が1Gbpsで月5,000円ほどですから「10倍以上払って、速度は1000分の1程度」と極端な状況となっています。
品質が向上しない最大の理由は、通信キャリア各社がモバイルユーザーを自社に繋ぎ止めるためLTEや4G回線などの設備投資を優先させているため、固定回線の品質向上に向ける資金が不足しているからです。
固定回線の改善がおざなりなのは、加入者が2010年をピークに減少、過去4〜5年はほぼ横ばいと「投資しなくても、顧客が増えも減りもしない」というのが理由です。
固定回線の整備が進まない一方で、携帯キャリア各社のLTE、4G回線の整備は確実に進んでいる。各社ともに、ジャカルタだけでなく地方都市にも3GからLTE、4Gへの転換を進めており、毎月のようにネットワークが拡大している。
日本との通信設定をどうするか
前述のように、日本本社などとクラウドコンピューティングで結ぶといった業務では、遅い回線に起因する通信不良や、長時間かけないとデータがアップできないといった問題が起こっています。
特にジャカルタでは渋滞が激しいため、移動中の車内でメールの処理を進める赴任者も少なくありません。この場合、「Office 365」やホスティング型のメーラーを使う人も多いのですが、ジャカルタではネットワークの帯域幅が狭いため、うまく繋がらないこともしばしばあります。
夕刻の帰宅時間帯になると、ネットの接続状況はさらに悪くなることがあります。これは、配車アプリで車やバイクを呼ぶ人が増えるため、ネットワーク全体への負荷が大きくかかるのが原因とみられています。
日本との緊急的な通信や、クラウドから重要なファイルを取り出したい時、「普段使っている回線がまるで通じない」という事態が起こるのに備え、全く異なる会社(ISP)と契約し、非常時用の回線を1本確保しておくことを強くおススメします。
重要なオフィス選定の際はネット接続状況
インドネシア特有の事情として、外国企業が入るようなオフィスビルは財閥系企業が建設、運営している物件が多いのですが、通信インフラもその財閥傘下のプロバイダしか使えないという縛りを付けているケースが多いです。
こうした場合、テナントが「このプロバイダの回線は使い物にならない」と思っても他社への乗り換えができません。したがって、入居先を決める際にはネットの接続状況や契約先なども合わせて尋ねるようにしましょう。