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インドネシアの消費市場動向

インドネシアの経済発展の様子を見ると、日本の1960年代頃と同様に高度成 長に伴う大量の「中間層」と呼ばれる人たちが生まれて来ています。消費市場の現状についての概況を追ってみましょう。

近年のインドネシア消費市場の傾向

インドネシアの地域別経済力を俯瞰してみると、やはり首都ジャカルタとその周辺が突出しています。しかし、首都圏だけでなく各地方の中核的な都市でも徐々に経済規模が大きくなって来ています。都市への人口集中も確実に進んでおり、これらの街では農業を中心とした第1次産業の従事者ではなく、製造業やサービス業で働く新しいタイプの労働者が増えて来ています。

これらの第3次産業で働く人々の消費需要を満たすため、地方にも新たにショッピングセンターが開かれる流れが顕著に見られます。今後は地方の中核的な都市の経済発展に注目して行く必要があるでしょう。

スマホの普及でEコマースが台頭

インドネシアにおける新たな消費市場の動きといえば、スマートフォンを使い、注文や決済ができるビジネスが急速に発展していることが挙げられます。インターネット市場の調査報告書『e-Conomy SEA Spotlight 2018』によると、インドネシアのインターネット経済の市場規模は2015年に80億ドル相当だったものが、2018年に270億ドル相当となり、さらに2025年には1000億ドルに達するということです。

インターネットの利用状況を調べてみると、国民の1日当たりネットの接続時間は8時間51分で世界4位、モバイルネットワークへの接続時間は4時間17分で世界3位に達し、ほとんどの利用者がなんらかのソーシャルメディアを利用しているとの統計もあります。 スマホを使ったサービスとしては、配車アプリの「GRAB」や、バイクを使った配達や移動などのサービスが予約できる「GO JEK」などが代表的です。

また、オンラインショッピングとして普及しているサイトとし ては「Shopee Indonesia」があり、1人1日当たりの購入額は 平均20万ルピアに達しています。ジャカルタ首都圏以外からのアクセスによる売り上げが全体の8割を超えているという注目すべきデータもあります。

ネット接続時間統計
ネットの接続時間統計に関するデータは「hootsuite “digital in 2018”」によります。なお、国別ネット接続時間の1位はタイの9時間31分、モバイルでもタイがトップで4時間56分に達します。ちなみに日本については、1日当たり4時間12分、モバイルでは1時間22分となっています。
中国JD.comの動き
中国で「アリババ」に次ぎ、Eコマースで2位の「京東商城」(JD.com) が着々とインドネシアがネット通販分野でシェアを拡げています。同社はインドネシア現地法人で1000人を超えるスタッフを擁し、自ら配送網を構築。インドネシアでのオンラインショッピングで新たなリーダーとしての地位を築きつつあります。なお、JD.comはさらに2018年8月、ジャカルタ西部のショッピングモール・ PIK Avenueに同社海外初となる無人スーパー「JD.ID X-Mart」を開設しています。

ASEAN10でのインドネシアの消費レベル

消費市場で比較した場合、インドネシアはASEAN10カ国の中でどんな位置にいるのでしょうか。統計を見ながらその傾向を探ってみましょう。

それぞれの国の中核都市における1人当たりの年間支出を見て行くと、ASEAN諸国のそれぞれの首都または商業の中心都市のうちジャカルタは6位で、マニラより低く、ホーチミンよりやや高い、という状況です。ただ見方によっては、 ASEAN設立時の6カ国では最下位、トップのシンガポールと 比べると6分の1、2位のクアラルンプールと比べても半分以下にとどまります。

ジャカルタの人々の支出における使途の割合を見て行くと、食費と住宅費で6割近く、交通費まで含めると7割を超えます。娯楽や衣類などのショッピングに使える余裕が大きくないというのが現状です。

「各国の可処分所得ごとの世帯構成」を見ると、インドネシアでは年間1万ドル未満にとどまる世帯が全体の4分の3に達しています。この「1万ドル未満」という世帯はどんなイメージの人々なのか、改めて説明してみましょう。

可処分所得1万ドル以下とはどんな暮らしか
「貧困」から脱し、市場経済に参入し始めた人々。まず新しい衣服を購入し、その後テレビ、洗濯機、冷蔵庫など文化的な生活に必要な家電製品を買い求めます。近年では、この層 の人々にまで携帯電話が普及しています。

インドネシアにおける今後の「中間層」の予測を示した表 は以下の通りです。

インドネシアの中間層推移と予測(単位:億人)
2010 2015 2020 2025 2030
上位中間層 0.1 0.4 0.5 0.6 0.6
下位中間層 1.1 1.1 1.2 1.1 1.2
中間層合計 1.2 1.5 1.7 1.7 1.8

※下位中間層=家計所得5,000-15,000米ドル
※上位中間層=家計所得15,000ー35,000米ドル
出展:柳川・森(2010)「アジアの「内需」を牽引する所得層」(NIRA モノグラフシリーズ NO.31(http://www.nira.or.jp/pdf/monograph31.pdf)、 Euromonitor Internationa「l World Consumer Lifestyle Databook」、国連「World Population Prospects」、世界銀行「World Development Indicators」、IMF World Economic Outlook、世界銀行の経済見通しを参照して三菱UFJリサーチ&コンサルティングインドネシア経済市場の年間支出及び主な内訳株式会社推計。

ジャカルタに人と富が集中

地方の中核都市の経済の伸びが著しいとはいえ、依然として首都ジャカルタが経済的には突出しており、地方との格差が著しいという問題が顕在化しています。

<>p例えば、インドネシア中央統計局(BPS)が集計した「州別1人当たり名目GDP」統計による と、ジャカルタ州では1人当たり2億ルピア近くまで伸びていますが、最も低い東ヌサトゥンガラ州では1,500万ルピアと10倍以上の開きがあります。ジャカルタ近郊の西ジャワ州でも4,000万ルピア以下ですから、その格差は顕著です。このような地方格差があるため、ジャカルタに職を求めてやって来る人々があとを絶ちません。

国連の機関による予測「UN World Urbanization Prospects」によると、2010年から20年までのジャカルタの人口の伸びは、910万人から1026万人と増加率が10%を超えています。

西ジャワ州への都市機能拡大が顕著

ジャカルタの西隣に広がる西ジャワ州に、首都のベッドタウンともいえる新しい街が次々とできています。すで にジャカルタ中心部とブカシ、チカランがインドネシア通勤鉄道(KCI)で結ばれているほか、LRT(ライトレー ル)の敷設工事も現在進められています。イオンモールがブカシ郊外に開設されたことで、「マンションに住んでショッピングモールで買い物する」といった都市型の生活スタイルが実現できるようになったことも大きいです。 ジャカルタから西ジャワ州とを繋ぐ高速道路の渋滞が激しいのが目下の問題ですが、日本企業の拠点が同州にさらに増えていることから、2019 年4月にはチカラン日本人学校(小中学校)が開校しました。

インドネシアにある小売店の傾向

インドネシアの人々はどのようなタイプの店舗で買い物をしているのでしょうか。小売業協会の資料をもとに分析してみます。

市民にとって最も一般的な買い物場所は、街中にあるマーケット(市場)で、6割以上が頻繁に利用すると回答しています。価格が安い上、身近にあってアクセスが良いため、という理由を挙げています。このような伝統的な市場は、農産物の地産地消には貢献しますが、加工食品の流通には今ひとつ向かないという欠点があります。次に4割がスーパーを頻繁に使うと回答しています。何でも揃う上、一定の品質が保たれていることが支持を受けています。スーパーの中には、下位中間層をターゲットにしたチェーンから、富裕層あるいは外国人をターゲットにした店まで、幅広いチョイスがあります。イオンがすでにジャカルタ近郊に進出しており、郊外に2店舗開いています。ハイパーマーケットに立ち寄るという回答も15%ほどあります。仏系カルフールが進出以来、インドネシアでは食料品から家庭雑貨などあらゆる物が揃うハイパーマートの需要が高いのがひとつの特徴でしょう。

近年では、コンビニがずいぶんと増えました。最大手は「インドマレット」、「アルファマート」が地場系の2番手です。日系の「ローソン」や「ファミリーマート」も着々とシェアを拡げています。 ユニークなのは、デパートの出店状況です。ジャカルタでは「時代遅れ」の感があるデパートは閉鎖方向にあるものの、ようやく経済力を付けて来た地方都市へは新たに出店という動きが出ています。 また今後は、アプリを使った買い物代行のマーケットがさらに拡がりそうです。

インドネシアの小売店利用率