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AECの経済統合と インドネシアにおける関税削減に向けた現状

2015年12月、アセアン経済共同体(AEC)が発足しました。加盟10カ国は域内における活発な経済交流をめざした施策を行っています。

AEC設立の意義と現状

アセアン経済共同体(AEC)とは、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国で構成する経済共同体で、2015年12月31日に発足しました。これにより、9割を超える品目について ASEAN域内の貿易における物品関税がゼロ%になるなど、高度な「モノの移動の自由化」を達成。さらなる活発な経済交流が期待されています。

一方、AECは経済協力での統合にとどまっており、共通通貨発行の動きはないほか、人の移動が制限されています。とはいえ、域内貿易の関税撤廃を目指す動きは、ASEANで展開する企業 にとって確実に追い風となります。

EUの経済統合
複数の国をまたぐ経済共同体としては、欧州におけるEU(欧州連合)があります。EUは法の整備のほか、ヒト・モノの自由な行き来、統一通貨ユーロを導入し金融政策を統合するなどより緊密な関係が結ばれています。
AEC設立までの経緯

時期 詳細
1967年 ASEAN、東南アジアの政治的安定、経済成長促進等を目的に設立
1993年 ASEAN自由貿易地域(AFTA)発効
1997年12月 ASEANビジョン2020を決定
2003年10月 2020年を起源にASEAN経済共同体(AEC)を発足することを宣言(バリ・コンコードII)
*物品に加え、サービス、投資、ヒトの域内移動自由化を目指す
*安全保障共同体、社会・文化共同体を合わせたASEAN共同体設立へ
2007年1月 AECの設立期限を2015年に前倒しすることを宣言(セブ宣言)
2007年11月 「AECブループリント」採択
2008年12月 ASEANの法的根拠となる「ASEAN憲章(ASEAN Charter)」発効
2010年8月 ASEAN物品貿易協定(ATIGA:ASEAN Trade in Goods Agreement)
*AFTAで定められていない貿易円滑化、税関、任意規格・強制規格及び適合性評価措置などが盛り込まれた。
2010年 ASEAN 6(オリジナルメンバー国)がほぼ全ての関税を撤廃
2015年11月 AEC発足に関するクアラルンプール宣言がASEAN各国首脳により署名
2015年12月 AEC設立(次の10年ビジョンを発表)
ASEAN10カ国加盟の経緯

時期 詳細
1967年 インドネシア、マレーシア、 フィリピン、シンガポール、タイの5カ国により発足
1984年 ブルネイが加盟
1995年 ベトナムが加盟
1997年 ラオスとミャンマーが加盟
1999年 カンボジアが加盟

AEC統合措置の達成状況

ASEAN物品貿易協定(ATIGA)に基づき、先進ASEAN諸国 6か国の間では2010年1月1日に原則として関税撤廃が実現しましたが、これに続き、後発ASEAN諸国(CLMV=カンボジア、ラ オス、ミャンマー、ベトナム)でも2018年1月1日付けで関税撤廃が原則的に達成されました。

なお、現状では関税対象になっていない品目はおおむね、ASEAN自由貿易地域(AFTA=ASEAN Free Trade Area)の特恵関税が示されていない武器やアルコール飲料などです。

なお、AECが発足して以来これまでに次のような統合措置が実現しています。

  • 「域内貿易の関税撤廃を目指す協定」の締結
  • 「AECブループリント2025」上に示された611措置のうち、8割ほどを達成。

【記事出典】「ASEAN経済共同体(AEC)発足による域内経済統合の実体と日本企業の動向」JETROバンコク事務所主任調査研究員(アジア)伊藤博敏氏編纂

AECブループリント2025
2016年から2025年までの統合措置の行程表となるもの。 物品、サービス貿易、投資、ヒトの移動などの分野で各種統合措置を規定している。 ただし、それぞれの統合措置に関する達成期限は明記されていない。
A)単一の市場と生産基地
    1.物品の自由な移動
    2.サービスの自由な移動
    3.投資の自由な移動
    4.資本のより自由な移動
5.熟練労働者のより自由な移動
6.優先統合分野
7.食料・農業・林業
B)競争力のある地域
1.競争政策
2.消費者保護
3.知的所有権
4.インフラ開発
5.税制
6.電子商取引
C)公平な経済発展
1.中小企業
2.ASEAN統合イニシアチブ
D)グローバルな経済への統合
1.対外関係
2.グローバル・サプライネットワークへの参加