「今後、富裕層が増えていくインドネシアでレストランをやらない理由はない」とは、とあるビジネスパーソンの言葉。確かに、 2030年まで続くとされる人口ボーナス期と経済の伸びを考えたとき、この言葉には妥当性があるかもしれません。
では実際にレストランを開業しようとしたとき、そこには一体どのような過程で、どのような手続きを踏む必要があるのでしょうか。
ジャカルタの外食産業界におけるスペシャリストたちのアドバイスのもと、そのプロセスについてひとつのモデルを紹介します。
目次
インドネシア/ジャカルタでのレストラン開業に必要な3つのフロー
プロセスは大きく次のような3つのカテゴリーに分かれています。
- 法人設立および不動産契約等手続き
インドネシアで外食事業を行うためには、事業母体となる法人を設立しなければならないため、そのための準備が必要。 - 設備および内装工事
物件選びから厨房設備や客席フロアの内装工事やインテリアから食器などの備品に至るまでの準備。 - 商品とサービスの準備
カスタマーに提供する商品、すなわちメニューとサービスについて、その内容を切磋琢磨しオープンまでに準備する プロセス。
準備時期 | 法人設立および不動産契約等手続き | 設備および内装工事 | 商品とサービスの準備 |
---|---|---|---|
7か月前 | |||
6か月前 | 法人設立 申請手続き 銀行口座開設 |
設備・内装業者選定 | メニュー・レシピ作成 サプライヤー(仕入先)の選定 |
4か月前 | レストランライセンスなどの申請 | 店舗設計図完成 輸入器具等発注 | 試作と試食 |
3か月前 | 入金 賃貸契約 |
入居→工事開始 什器・インテリア・ 備品等 発注 |
シニアスタッフの採用 |
1か月前 | ビザの申請 雇用契約書の作成 |
– | プロモーションスタッフの採用 → トレーニング |
準備完了 |
インドネシアのレストラン市場の視察と会社設立
飲食店開業時の視察の際に得ておくべき情報
インドネシアでレストランを開業しようと思い立ったら、まず現地の事情を知るために視察をしてみましょう。その際に把握すべき情報は、次の三つの項目です。
視察の際に注目のポイント
- パートナー企業について
- 出店場所
- 食材の調達先(サプライヤーの情報)
まずパートナー企業については、日系企業はインドネシアでは外国資本にあたるため、ビジネスを始めようとする時に受ける制限(いわゆる「ネガティブリスト」)があります。
外資100%つまり自分たちの資本のみでやろうとすると高額な資本金が必要になります。そうでない場合は、インドネシアの企業とパートナーシップを組み 合弁企業を作った上で、その事業体としてレストランを開業する、あるいはパートナー企業に店の屋号や内装のデザイン、メニューやレシピを提供し、フランチャイズ契約やアドバイザリー契約を結ぶ形式を選ぶ方法もあります。
最近では、日本の外食産業を誘致したいと考え、提携先を探しているインドネシア企業も増えており、そういった情報と機会をうまく捉えることが大事です。
ネガティブリストについては「インドネシア企業進出の基礎と規制事項(ネガティブリスト)」を、外国資本がインドネシアで設立できる法人とその手続きについては「インドネシアへの外資企業進出・設立の流れについて」も併せてご参照ください。
現地の飲食店事情をよく知る専門家に相談
現在、ジャカルタには日系の外食レストランが数多く進出していますが、その多くがインドネシア企業と何らかのパートナーシップを組んでいます。
パートナー企業についての情報は、独自で取ろうとするよりも、 やはり専門機関、専門家に相談することが望ましいでしょう。
現地には日系銀行やJETRO、またはこうした案件について日本語が通じたり日本人の担当者がいる専門コンサルタント会社があります。
近年新たなビジネスチャンスを狙って日系企業との提携を求めているインドネシア企業も増えており、専門コンサルタントの元にはそうした情報も集まっていますので、一度足を運んでみると良いでしょう。
出店場所については、パートナーとなるローカルの企業のつながりで決まることも多いようですが、マーケティング調査会社に依頼して出店先を探すケースもあります。しかし、開業を目指す企 業の担当者が自ら足を運び、視察を重ねることが重要なのは言うまでもありません。出店する業態とロケーションのマッチングも重要です。自分たちの商品がどのような層の人たちに支持されるか、という観点で視察を重ねるのが良いでしょう。
グループ名 | 日系 | 他の外資 |
---|---|---|
BOGA GROUP | しゃぶ里 ペッパーランチ など |
パラダイス ダイナシティ など |
DANIPRISMA GROUP PT.Sri Boga Ratu Raya |
丸亀製麺 など | PIZZA HUT など |
SALIM GROUP PT Indfood Comsa Sukes Makmur |
ポポラマーマ など | ソラリア など |
PT Fast Food Indonesia Tbk | – | ケンタッキー フライドチキン など |
MAP GROUP PT Mitra Adi Perkasa,Tbk |
元気寿司 など | STAR BUCKS BUGER KING など |
WINGS GROUP | 吉野家 など | – |
集客力の高いショッピングモールへの出店
入居する物件によって、当然のことながら入居の際の審査や規制、デポジットなどの条件が違いますが、一般的には路面店よりもショッピングモールなどの商業施設、あるいはオフィスビルのテナント条件の方が厳しいと言われています。
集客力のあるショッピングモールほど入居条件も厳しくなりますが、プロモーションを考えれば魅力的であり、それぞれの条件が自分のビジネスとどう合致するかは実際に足を運び自分の目で確かめなくてはわかりません。
ショッピングモール名 | 特徴 | アクセス |
---|---|---|
PLAZA INDONESIA プラザインドネシア |
世界的なブランドが入る高級感あふれるモール。 子ども向けのフロアもあり、家族連れで楽しめる。 モールに直結したホテ ル、アパート、地下にはスーパーあり。 |
住所:Jl. M. H.Thamrin Kav.28-30, Jakarta Pusat 公式サイト:http://www.plazaindonesia.com |
PACIFIC PLACE パシフィック プレイス |
ジャカルタで唯一のキッザニアが入るモール。 高級ブランドの店舗も多く、日本食があるレストラン街もおしゃれ。 スーパーKemchicsが地下にあり、映画館もある。 |
住所:Jl. Jend. Sudirman Kav.52-53, Jakarta Pusat 公式サイト:http://www.pacificplace.co.id |
SENAYAN CITY スナヤン シティ |
Plaza Senayanの向かいにある。高級ブランド店、BEST電器が入っている。 大きなイベントホールがあり、子どものプレイグラウンドLollipopや映画館もある。 |
住所:Jl. Asia Afrika Lot.19,Jakarta 公式サイト:http://senayancity.com |
CENTRAL PARK セントラル パーク |
池のある広い中庭があり、週末は近隣住民が寛いでいる。周りには巨大アパートが林立している。 空港へ行く前の食事場所として 利用するのにも便利。 SOGOデパートがある。 |
住所:Jl. Letjen. S. Parman No.28, Grogol petamburan, Jakarta Barat 公式サイト:http://www.centralparkjakarta.com |
ショッピングモール名 | アクセス |
---|---|
GRAND INDONESIA グランド インドネシア |
住所:Jl. M. H.Thamrin No.1, Jakarta Pusat 公式サイト:http://www.grand-indonesia.com |
PLAZA SENAYAN プラザ スナヤン |
住所:Jl. Asia Afrika No.8, Jakarta Pusat 公式サイト:http://www.plaza-senayan.com/ |
KOTA KASABLANKA コタ カサブランカ |
住所:Jl. Casablanca Kav.88, Jakarta Selatan 公式サイト:http://www.kotakasablanka.co.id |
PONDOK INDAH MALL 1/2 ポンドック インダー モール1/2 |
住所:Jl. Metro Pondok Indah, Jakarta Selatan 公式サイト:http://www.pondokindahmall.co.id/ |
GANDARIA CITY MALL ガンダリア シティ モール |
住所;Jl. Sultan Iskandar Muda, Jakarta Selatan 公式サイト:http://www.gandariacity.co.id |
LIPPO MALL KEMANG リッポー モール クマン |
住所:Jl.Pangeran Antasari No.36, Jakarta Selatan 公式サイト:http://lippomallkemangvillage.com |
インドネシアでの食材の調達先
そして、もう一つ重要なのが食材の調達先。メニューやレシピがあらかじめ決まっていても、材料の調達はまた別問題です。
インドネシアで日本と同じものを同じように提供できるとは限りませんが、日本から輸入するとコストがかかり、その分価格を高く設定しなければなりません。
何がどこで手に入り、手に入らないものは何か、あるいは調 できないものについてはどうするか、ということも視察の時点でしっかり把握しておく必要があります。
開業に必要なライセンスの取得
会社設立そのものにかかる期間は トータルで30〜40日営業日程度です。
(※「インドネシアへの外資企業進出・設立の流れについて」も併せてご参照ください。)
しかし、レストラン開業にあたっては、それとは別にレストランの営業ライセンス取得が必要であり、さらにアルコールを提供する場合にはそのためのライセンスも必要です。それらは事業体となる法人の「所在地証明書」を取得した後でないと申請できません。
レストランライセンスの申請先は観光省、申請に際しては約3,000万ルピア+諸費用、メニューや座席数等の情報が必要です。アルコール販売のライセンスは市役所と警察の管轄となります。
これらに要する期間は、レストランライセンスが2〜3カ月、 アルコールのライセンスが3〜6カ月と言われていますが、レストランライセンスの申請と同時にお店のオープンは可能です。
その後、管轄官庁の担当者が視察に来ますので、それによって許認可が下り、正式開業ということになります。
会社設立から実際にレストランがオープンするまで、スムーズに手続きが進めば7〜8ヶ月ですが、そうでない場合は1年半くらいかかるケースもあります。
その差はプロジェクトの信頼性にかかっていますので、なるべくスムーズに進めるためにも視察の段階で必要なポイントをしっかり把握しておきましょう。