中部スラウェシ州モロワリ県で、ニッケル精錬事業の進展に伴う周辺住民の健康被害が深刻化している。同州保健局のデータによると、2024年の急性上気道感染症の症例数は州全体で33万9,305件に達した。特に大規模工業団地インドネシア・モロワリ・インダストリアル・パーク(IMIP)が位置するバホドピ郡では、同県内の症例約8万件のうち6万6,000件が集中している。
モロワリ県保健局の局長、アシャール氏は、精錬所に電力を供給する石炭火力発電所による大気汚染が呼吸器疾患の急増を招いていると指摘する。また、急激な人口流入に伴い性風俗産業が拡大し、性感染症の拡散も新たな脅威となっている。2016年から2024年までに同県で確認されたHIV症例214件のうち、101件が精錬所周辺で発生した。アシャール氏は「人口流動の激しさが感染防止の壁になっている」と述べ、若年層への感染拡大に危機感を示す。
これに対し、IMIPのメディアリレーション部門責任者、デディ氏は、企業として「村のクリニック」プログラムを運営し、住民の健康相談に対応していると説明する。しかし、アシャール氏は「バホドピ郡には保健所が一つしかなく、医療体制は依然として極めて不十分だ」と強調。同郡に保健所を新設する計画を進めるなど、工業化の影で住民の健康保護が喫緊の課題となっている。

















