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対岸の火事ではないアフガン情勢 救援機、デモ、テロ影響を懸念

 このところ国際社会はコロナ禍を凌駕する勢いでアフガニスタンの危機を連日伝えている。インドネシアも対岸の火事ではなく、ルトノ・マルスディ外相の活躍でタリバンと交渉したり、アフガン当局やカブール空港を管理するNATOなどとも調整したりしていち早く在アフガン大使館員、アフガン人スタッフなどを派遣した空軍の輸送機で20日未明に隣国パキスタンに運んだ。

自衛隊機を複数派遣しながらも1人の日本人、16人のアフガン人(米軍の依頼という)しか救出できなかった日本とは大違いである。初動の立ち遅れ、タリバンやアフガン政府、NATOなどとの人的パイプの乏しさが影響したこともあるだろうが、いち早く日本大使館の日本人職員だけが国外脱出したことも関係しているのではないだろうか。

あくまで私見だが、空港にたどり着けた救出対象の日本人1人を運ぶなら、付近にいた脱出希望のアフガン人を同乗させるという機転は利かなかったか、杉原千畝のように。法的制約、杓子定規の日本だけに「臨機応変」「人道的配慮」は現実的ではないのだろう。

こうしたアフガン情勢の急展開を受けて、ジャカルタ中心部のクボンシリ通りにある国連難民高等弁務官(UNHCR)事務所前では、8月24日にジャカルタに滞在して第3国に向かう難民申請をしているアフガン人によるデモがあった。「一日も早く第3国定住を」と訴え、一部で警備にあたる警察官ともみ合いになったという。

さらに国家警察などは8月に入って一斉手入れで「ジェマ・イスラミア(JI)」「ジェマ・アンシャルト・ダウラ(JAD)」などのテロ組織、メンバーを摘発、独立記念日(17日)を狙ったテロ計画を予防したという。

「JI」は国際的テロ組織「アルカイダ」と関係があるとされ、「JAD」はカブール空港付近で自爆テロを実行し米兵などに多数の犠牲者を出した犯行組織の元締めである「イスラム国(IS)」に忠誠を誓う組織である。

こうした背景から「アフガン情勢とテロ」のインドネシアへの影響、波及が今後懸念される事態となっているのだ。

「テロのネットワーク」は国際社会に緻密に張り巡らされ、活動は「水面下、闇の中」という厄介な存在がテロである。故にインドネシアにとっても、決して今回のアフガンの動静は他人事でも対岸の火事でもない。「今そこにある危機」と肝に命じるべきである。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。ジャカルタ在住。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。