インドネシアが未来都市として建設を進める新首都 Ibu Kota Nusantara(IKN)。ジャカルタの過密を解消し、国家機能を分散させる壮大な国家プロジェクトとして注目を集める一方、その現実は一筋縄ではいかない。
スラウェシ島から訪れた観光客は、「まるでシンガポールみたい。清潔でモダンで、まさにジャングルの中の奇跡」と語る。長くジャワ島に集中してきた政治・経済機能が、東部へと移ることへの期待は確かに大きい。
一方で、まだ人の気配がまばらな“静けさ”が広がっている。壮大なイスタナ・ガルーダやタマン・クスマ・バンサといった施設が完成し、約2,000人の公務員と8,000人の工事作業員が暮らしているにもかかわらず、街にはまだ活気が感じられない。
現在のIKNは、政治の中心地というよりも、新しさを求める人々が訪れる「未来の街の見学地」としての側面が強い。
2028年までに政治首都としての機能移転を完了することが大統領令で定められており、Gibran Rakabuming Raka副大統領が執務を行う案も浮上している。輝かしい未来像と、まだ形を探る静かな現実。新首都 IKN は、その二つの顔を併せ持ちながら、確実に歩みを進めている。




















