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『禁酒法案』国会審議にみる不可解と混迷

インドネシア国会が11月11日から審議を始めた「禁酒法案」の行方は在留日本人にとっても他人事ではない。「ビールやワイン、日本酒が飲めなくなるかもしれない」という切実な問題を含んでいるからだ。

だが、冷静に考えるとイスラム政党など3党が提出したこの「禁酒法案」で「飲酒が社会に与える影響から国民を守る」という趣旨の説明は不可解なものといえるだろう。

まず社会に深刻な影響を与え、犯罪とも関連しているのは、現在のインドネシアでは「ミヌマン・クラス」といわれるアルコール類より圧倒的に麻薬が多い実態がある。さらに飲酒はあくまで個人の嗜好であり、いくら人口の約88%を占めるイスラム教徒にとっては禁忌であっても、それを非イスラム教徒に「強要する」ことはあってはならない。

なぜならインドネシアは国是である「多様性の中の統一」「寛容性」の精神によって多民族、多文化、多宗教、多様社会を歴史的に統合しようとしてきた国家であるからだ。

ところが近年は圧倒的多数のイスラム教による規範、習俗が大手を振ってまかり通り、非イスラム教徒がそれを「忖度する」という傾向が一段と強まっているようにみえる。

性的少数者(LGBT)やパプア人などの「少数者」への差別、迫害がいい例ではないか。

「禁酒法案」では宗教行事や慣習目的、医療、観光は例外とするとしているようだが、それならなおのことこの法案審議の意味が不明になり、混迷しているといわざるを得ない。

世界的観光地のバリ島では州議会が中心となって「禁酒法案」を廃案に追い込むべく中央への働きかけを強めているという。バリのビーチでビールが飲めなくなるのは日本人を含めた観光客、ヒンズー教徒のバリ人にとっても「死活問題」だからだ。

国会は「禁酒法案」より「コロナ対策」「コロナ禍による経済不況、失業対策」など優先審議すべき課題があるのではないだろうか。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。ジャカルタ在住。




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