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できないこと、できることあれこれ 在留日本人のコロナ感染防止対策

インドネシアに在留する日本人によるコロナ禍からの「脱出」が続いている。民間の1企業による駐在員とその家族を対象にした「特別便」に続いて、日本にある所属会社や団体の協力で一時帰国させる企業戦士を主な対象にした「特別便」の運航。さらに一般の日本人に対象を拡大した「特別便」も限定的ながら運航されるようになってきた。

一方で日本に本社のある企業や団体に属さない個人営業やインドネシアその他の外国企業に務める在留日本人などは、依然航空券確保が難しい「定期航空便」に頼るしかなく、一般対象の「特別便」も費用が割高という。

こうした「今そこにある危機」という厳しい状況の中で「できること」と「できないこと」への見極めが問われているといえる。
在留日本人から「日本からジャカルタへ飛ぶ航空便や特別便でワクチンを運び、日本大使館で医療関係者や大使館医務官による接種は可能なのか」という声が出ている。

実際に大使館に問い合わせたところ「ワクチン運搬」は難しく、大使館医務官による接種などの医療行為は、ウィーン条約で赴任地の医師免許を医務官が所得していないため事実上できないということだった。

こうした問題はインドネシア以外の大使館も抱えているようで、タイの日本大使館が在留邦人向けの「ワクチン接種」を決めた。バンコク市内の医療機関でタイ人医師がアストラゼネカ製の接種にあたるとのことで特別枠として在留日本人の接種が可能になるという。

こうした「打開策」に関しては、ジャカルタの日本大使館もインドネシアの保健当局などとすでに検討を開始しているようで、一日も早い実現が望まれている。

在留日本人の中には「すでに中国製ワクチンの接種を受けた」という人から「米英製ワクチン接種の道を探している」「ワクチン接種は躊躇している」「闇で有料ワクチン接種の誘いがあるが高額すぎる」など様々な立場がある。

こうした在留邦人の不安や悩みを一気に解決できそうなのが、タイ方式であると思う。いずれにしろ様々な選択肢があり慎重に考慮の上「最善の選択」をしてほしいと切に願う。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。ジャカルタ在住。