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テロ警戒情報の背景を読み解く 東南アジア各国に外務省が発出

9月12日前後に東南アジアのインドネシア、シンガポール、マレーシア、ミャンマー、タイ、フィリピン6か国に在住する日本人に対して、日本外務省が「テロ攻撃に関する脅威情報」を発出した、と各国メディアが伝えた。

警戒情報の冒頭には共通して「礼拝場等の人が多く集まる場所への自爆攻撃が発生する可能性が高まっているとの情報がある」と場所、方法についても述べられていることから、複数のジャカルタ在留日本人からも「この報道の真偽は」「どこまで脅威が迫っているのか」という問い合わせがあり、結構神経過敏になっていることが伝わってきた。

今回の外務省による「脅威情報」は日本独自の情報収集の結果というより米情報機関や米政府による情報に基づくものである。米は20年を迎えた9・11同時多発テロ、そしてタリバンの復権と米軍撤退で混乱したアフガン情勢などを総合的に分析した結果、テロの脅威が高まっているとして警戒を呼び掛けたのだった。

かつては在外公館に派遣された防衛駐在官、警備官などという自衛隊、警察からの出向者がその国のカウンターパートから情報の収集、交換をすることが多かった。今はどうか知らないが1990年代、マレーシア軍教育機関に陸自が留学生を派遣し、のちに防衛駐在官として赴任させるという制度があった。留学中に構築したマレーシア軍人との信頼関係、ネットワークを赴任時に最大限生かすという戦略に基づくものだった。

コロナ禍もあり、かつてほどこうした大使館員による独自の情報収集活動も様々な制限を受けているのかも知れない。信頼関係は短期間で構築できるものではないだろうから。

外務省の「テロ脅威情報」に対してタイやマレーシアの当局は「具体的なテロや差し迫った脅威に関する情報はない」と火消しに躍起となった。

ただインドネシアだけは国家警察対テロ特殊部隊「デンスス88」が「日本の脅威情報について精査する」と慎重な姿勢を示した。といってもインドネシアが差し迫った「礼拝場などでの自爆テロ」という脅威情報に接している訳ではない。というよりむしろインドネシアの場合は「テロの脅威は常に今そこにある危機」という意識がいつ、どこでも求められる状況にある、として警戒だけは怠らないことが肝要であろう。あくまで心構えとして、ではあるが。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。ジャカルタ在住。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。