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RCEP発効でどうなる立ち位置 米中の狭間でインドネシア難路

1月1日に東アジアの貿易自由化を主目的とした経済連携協定であるRCEPが発効した。インドネシアを含む東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国に加えて日中韓、オーストラリア、ニュージーランドの15カ国が署名し、韓国やインドネシアを除きすでに批准した10カ国で発効したのだった。

インドネシアが未批准なのは単なる手続き上の問題といわれているが、ここへきてRCEPへの警戒感浮上との情報もある。

「なぜ警戒感なのか」。それはRCEPには2大経済大国である米国が署名していないこと、さらに米中に次ぐ経済大国の一つでもあるインドが交渉中にRCEP参加を取りやめたことと無関係ではない。要するにRCEPという新たに誕生した域内人口約22億人、国内総生産(GDP)が約25兆8000億ドルという世界の約3割を占める巨大経済圏が中国主導になることへの「警戒感」なのだ。

インドネシアは政治、特に安全保障では南シナ海で一方的に自国の海洋権主張を続ける中国に厳しい姿勢で臨んでいる。その一方で経済・インフラ支援、投資促進、貿易拡大などでは中国主導を受け入れている。それが中国による独自の経済圏「一帯一路」構想の一環と熟知した上での受け入れである。

そこには独自色を出すというより「中国の思惑通り」を是とする親中派閣僚らによる政策が「まかり通っている」のが実状といえるのではないだろうか。

そこに加えて今回のRCEPである。中国は貿易拡大と同時に「サプライチェーン(供給網)の安定化」を意図しているとされ、そのターゲットは日韓豪、ニュージーランドではなく、ASEAN各国であることは明らかといえる。

要するにRCEPによってインドネシアなどASEAN各国は中国製品の消費マーケット、そして原材料の中国への資源輸出国、それも関税の削減や撤廃を伴った圧倒的に「中国が有利な」経済圏に組み込まれる危険が潜在的にあると指摘されているのだ。

2022年10月には国際社会を二分する米中の首脳がG20サミット(バリ島)で顔を合わせる機会があり、インドネシアは議長国という重要な役割を担う。そのインドネシアと同時に米中の狭間でどういう立ち位置でどう立ち回るか、経済界の「貿易自由化が進む」との歓迎とは裏腹に日本も難しい立場となる。RCEPは頭の痛い問題である。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。ジャカルタ在住。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。