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ジョコウィ大統領子息にも汚職疑惑 いつまでも払拭できない旧弊、悪弊

インドネシアを理解する用語の一つとして「KKN」という言葉がある。「Korupsi、Kolusi,Nepotisme」の略語で日本語では「汚職、癒着、縁故主義」とでもなるだろうか。「癒着」は「談合」とも訳される。いずれにしろ、1998年に民主化のうねりと経済危機を背景に崩壊したスハルト長期独裁政権時代を象徴する旧弊であり、同時に悪弊であると理解されている。

民主化に伴うスハルト政権以後の各政権は例外なくこの「KKN」の払拭を掲げ、その撲滅に邁進する姿勢を示してきた。

ところが政府の掲げる目標と実際の社会の在り方には「雲泥の差」が残り、庶民派とされて国民の人気があり、その庶民目線での政策が期待されたジョコ・ウィドド政権下でもこの「KKN」は政治経済社会に根強くの残り「威力」を発揮している。それは一例として国家機関である「汚職撲滅委員会(KPK)」による相次ぐ摘発がある。

第5代メガワティ元大統領の肝いりで創設されたKPKはジョコ・ウィドド政権下の国会でその強力な捜査権力が削がれたとはいえ、いまだに汚職摘発の牙城となっている。

メガワティ元大統領は2001年7月の大統領就任に先立ち自宅に一族郎党を集めて「汚職撲滅への強い意志」と「身内のKKNは許さない」姿勢を鮮明にしたという。しかしKKNはまるでインドネシア人のDNAに刷りこまれたかのように歴代政権下でも根絶とは程遠い実態が続いている。

そして今、ジョコ・ウィドド大統領の長男で中部ジャワ州ソロ市のギブラン・ラカブミン市長と次男の実業家・投資家のカエサン・パンガレッ氏に対する汚職疑惑が浮上しているのだ。

ギブラン市長とカエサン氏はともに会社を経営してビジネスを展開しているがその会社に企業グループから993億ルピアという多額の資金を提供されたことから「大統領の親族でなければ多額の資金提供を受けることはできないことは確実」とKPKに対して反汚職活動家の大学教授が告発したのだ。

「ジョコウィ大統領の身内もか」とインドネシア国民からは呆れる声も出ているというが、KPKがこの告発を受けて本格的捜査に乗り出すかは微妙な情勢という。そこに権力への忖度や配慮とか大統領への手心、斟酌があってはならないのだが、国会に「牙を抜かれた」KPKが汚職摘発の捜査機関としての面目を躍如してほしいものである。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。ジャカルタ在住。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。