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930の悲劇を忘れるなかれ インドネシア現代史最大の闇

毎年9月30日が近くなるとテレビでは当時の軍部によるクーデター失敗を再現したドラマ仕立ての映画が放映されるのが恒例だった。国民に「930事件」を忘れないように当時を思い出せるためであり、映画は共産主義に傾倒した軍兵士による将軍らの暗殺という定番のストーリーだが、その後に起きた共産主義者やそのシンパ、家族などを殺害した大規模な虐殺事件に触れることはまずない。

最大の理由は関係者がまだ生存しており、機微に触れる問題には「触らぬ神に祟りなし」という風潮がまだインドネシア社会に残っているからだという。

そんな中インドネシア研究、特にフィールドワークによる足で得た情報、証言を基に歴史や社会の裏に切り込むことでは定評がある倉沢愛子さんによる「インドネシア大虐殺 二つのクーデターと史上最大級の惨劇」(中公新書)は廉価版としてこのインドネシア現代史最大の闇を見事に描いており、一読に値するというか必読書といえる。

ジャカルタ南東部のハリム空軍基地近く930事件で虐殺された将軍の遺体が遺棄された井戸、尋問した建物などがあり、併設されているパンチャシラ・サクティ資料館には小型のパノラマ形式による各地で起きた虐殺の様子が再現されている。虐殺の発端となった軍高官の遺体が遺棄された井戸は周辺を囲まれて保存されている。天井の鏡で井戸内部が覗きこめるようになっているが暗くて何も見えない。井戸の上部縁には後で描いた赤い血糊がペンキで塗られ、臨場感を演出している。

ここにはインドネシアの若者や社会見学の小学生たちが多く訪れ、直接知らない930事件を学んでいる姿を見ることができる。

インドネシアでは真相解明が進まずというか進めようという気運も低く「現代史最大の闇」としてある意味「葬られよう」としている。ワニの穴、ジャカルタ市内の殺害されたヤニ将軍自宅、間一髪殺害を逃れたナスチオン将軍邸宅は資料館として公開されている。ぜひ足を運んで歴史を学んでほしい。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。

 

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