12月で定年を迎えるユド・マルゴノ前司令官の後任として、アグス・スビヤント現陸軍参謀総長がインドネシア国軍(TNI)の司令官に任命され、先月22日大統領宮殿で任命式が行われた。任命式には、ユド・マルゴノ前司令官の他に、ファジャール・プラセティオ空軍参謀総長(KSAU)、ムハンマド・アリ海軍参謀総長(KSAL)、リスティオ・シギット・プラボウォ国家警察長官など多くの高官が出席した。
インドネシア国軍は、現在陸・海・空の3軍から組織されている。最高司令官をジョコ・ウィドド大統領とし、軍政を次期大統領の有力候補とされているプラボウォ・スビアント国防大臣、軍令を今回任命されたアグス国軍司令官が管轄することになる。陸・海・空合わせて約40万人の軍人を要しており、主に多くの島を有し広大な国土を誇る自国の防衛と、国内の治安維持や災害発生時の救援派遣などを担っている。
さて、軍と言えば宗教と同じく日本人の意識が希薄な部分だと言われている。「自衛隊は軍隊か?」という議論が国内ではしばしばなされるが、少なくとも海外からの認識では自衛隊は軍隊である。国際プロジェクトWVSが世界79カ国を対象に行った「もし戦争が起こったら国のために戦うか?」という調査結果がある。はいと答えた人数の割合は、インドネシアが86.4%で7位だったのに対し、日本は13.2%で最下位の79位であった。ちなみに1位はベトナムの96.4%である。ベトナムは徴兵制で男性は2年の兵役が義務付けられているが、インドネシアや日本は徴兵制ではなく、志願のみでの募集となっている。しかし、国民の国防意識には大きな差があることが顕著に表れている。さらに言えば、日本の1つ上の78位はリトアニアで32.8%がはいと答えている。圧倒的に国を守るという意識に欠けているのが、今の日本の現状なのである。
もちろん戦争など起きないに越したことはない。全人類の願いは、戦争のない平和な世界であろう。「国のために」「国を守る」という意識が令和では時代錯誤という考え方にカテゴライズされつつあることも理解している。これは自衛隊員を含めた日本国民の総意が「無駄な血は流したくない」というものだともいえるだろう。自衛官に感謝や理解のある日本人と、愛国心はあるものの軍人に尊敬や憧れはないというインドネシア人。いずれの民も願っているのは、自国を心から愛せるような国づくり、国家間で無益な争いの起きない世界づくり。いくら難しくても、追わないと実現はしない。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。