ライフネシア:インドネシア進出の経緯とインドネシア市場の感触を教えてください
日本酒を世界に広めることをミッションに、弊社は世界62カ国に日本酒を輸出しています。ドバイやマレーシアなどムスリムの多い地域でも売上は好調で、インドネシアにも大きな可能性を感じ、約3年前に進出しました。日本酒の味をよく分かっていらっしゃる方はまだ少ない印象ですが、大都会ジャカルタには感度が高い方、日本酒についてもっと学びたいという意欲のある方、そして高級日本料理店の数が多く、日本食&日本酒のペアリングで攻めやすい市場であると感じています。
米国市場そして世界での取り組みについてお聞かせください
90年代に米国に進出した時は現地の方々にとって「南部美人」の発音が難しく馴染みにくかったことから「Southern Beauty」と呼んでいましたが、現在では米国でも「南部美人」「Southern Beauty」両方の名が浸透しています。当初は国によって味やラベルを変えることも考えましたが、現在は現地化を一切行っておらず、我々が創った日本で評価された味で、世界の舞台で勝負しています。
北米には現在約60社の日本酒メーカーが進出しており、北米清酒組合もあります。米国最大の米の産地アーカンソー州では山田錦も作られています。我々のコンサルティング・技術指導のもと「Origami Sake」という酒蔵も立ち上がっていて、清酒の造り方のセミナーなども開催しています。これに対し「なぜライバルを応援するのか」「輸出量が減る」「技術の流出だ」などとおっしゃる方もいますが、酒造りを知らない方が作ったまずい酒が出回り、日本酒のイメージを損ねてしまうことの方が余程恐いです。またどれだけ米や技術を真似ても、米国では南部美人と同じ酒は絶対に作れません。であれば「日本酒は美味い!」と言われるよう、そして手頃な米国産の日本酒の質を底上げし「ではMADE IN JAPANの日本酒はどんなに美味しいことだろうか」という興味と需要を生むように、我々は酒造りの理と技術をできる限り伝え、現地生産を応援しています。
日本酒が美味しいと言われて損をする蔵元は世界にも日本にもいません。むしろ自社だけ大きくなろうと試みると無理や歪みが生じます。数百年もの伝統の上に立っている我々にとっては自社の利益などではなく、我々の世代が世界への扉を開け、世界中の人々に日本酒を届けるという大きな戦いを次の世代にバトンタッチしていくことこそが大事なミッションなのです。
2013年に「和食」が無形文化遺産に登録された折には、和食にビジネスとしての価値を見出して業界に参入する方が大幅に増加しました。今や世界中にとんでもない数ある日本食レストランは、我々にとっては窓口です。まずは和食と合わせて日本酒を知っていただき、その後に現地の料理とも合わせて日本酒を飲んでいただけるように努めています。今年12月には「伝統的酒造り」のユネスコ無形登録無形文化遺産登録の審議決定が見込まれています。これを機に、世界を舞台に國酒(日本酒・焼酎・泡盛)の価値創造を推進し、現在はまだワインの100分の1程度である世界における日本酒の輸出量を50分の1ぐらいまでに増やしていきたいと考えています。
ジャカルタにいらっしゃる日本人の方へ、一言お願いします
熱々の餃子を食べたらビール、チーズや生ハムを食べたら赤ワインを自然と体が欲するように、寿司や刺身を食べたら私たち日本人のDNAが「日本酒が飲みたい!」と叫びませんか。日本にいる時のようにいつでも好きなだけ日本酒を飲むことは難しいかと思いますが、1ヶ月に一度でも、2週間に一度でも、本当に美味しい和食を食べる時には、日本人のDNAに逆らうことなく、自分へのご褒美として是非美味しい日本酒を召し上がっていただきたいです。
我々も南部美人の味わいをさらに広めるために、ジャカルタやバリだけでなくインドネシア全土で南部美人が飲めるよう、様々なキャンペーンや試飲会を開催していく予定です。