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タナ・トラジャの赤ちゃんが眠る木 Aluk Todolo信仰の痕跡

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南スラウェシ州タナ・トラジャ、カンビラ村には、赤ちゃんの遺体を埋葬した木「カンビラの赤ちゃんの墓木(Baby Kambira Grave)」がある。赤ちゃんの遺体を樹齢数百年のタラの木に埋葬する風習「Passiliran」は「Aluk Todolo」とよばれる祖先を重んじるトラジャ族の民間信仰(精霊崇拝)によるもの。この木の管理者であるMathen Domme氏は「タラの木は母親を象徴します。亡くなった赤ちゃんは、子宮の中にいた時と同じように背中を丸めた屈位で裸のままタラの木の幹に埋葬され、木の枝で覆われました。これは死者が母親の胎内へ戻ったことを意味します。この木の正方形の印はその跡です」と説明する。

後にキリスト教が伝わり、トラジャ族の根底にはAluk Todoloの教えが生き続けたものの、その多くは先祖伝来の信仰を捨て、キリスト教に改宗したため、木葬の風習は今日には残っていない。「私のいとこが最後にここに埋葬されたのは1970年代頃でした。その頃からAluk Todoloの信仰は薄れ始め、以降赤ちゃんの木葬はされていません」とMathen氏は加えた。信仰が薄れ伝統が失われてもなお、かつてトラジャ族が大切にした信仰の痕跡として、赤ちゃんが埋葬された木は今も大事に保存されている。