インドネシアの伝統菓子の中に、その奇抜な名称で人々を驚かせる一品がある。バントゥル発祥の「Kue Kontol Kejepit」、別名「Adrem」である。このユニークな菓子がこのほど、インドネシアの無形文化遺産に登録された。
「Kontol Kejepit」は直訳すると「挟まれた男性器」を意味し、初めて耳にする者には衝撃的に響く。一説にはその奇妙な形状に由来するとも、また、揚げた生地を三本の竹串で「挟む」(インドネシア語で「kejepit」)という独特の調理法に由来するともされる。現地の職人であるマルディネム氏やキスミナ氏らは、後者の説を支持している。
この菓子は単なる甘味ではない。かつては収穫祭において農業の女神デウィ・スリに捧げる供物とされ、赦しと平穏(現地語で“adhem”)を願う精神性が込められていた。原料には米粉、砂糖、ココナッツが用いられ、素朴で香ばしい甘さが特徴である。
製法は現在もバントゥルの職人たちによって受け継がれており、子どもから大人まで幅広い世代に親しまれている。近年では現代の嗜好に合わせた新たなフレーバーも登場し、この特異な文化遺産は今なお進化を続けている。