今回より本コラムを担当させていただく、リンクアンドモチベーションインドネシア代表の松木です。
当社は2000年の創業以来、「モチベーションエンジニアリング」という独自の基幹技術を用い、採用・育成・制度・風土といった組織に関するテーマをワンストップで、数多くの企業の組織変革を支援してまいりました。多くのお客様から後押しもいただいて、現在は日本、シンガポール、ベトナム(ホーチミン・ハノイ)、タイ、フィリピン、そしてインドネシアの6ヶ国で事業を展開しております。
インドネシア拠点の立ち上げの際に、多くの経営者と議論を重ねる機会をいただく中で、とある経営者の言葉が胸に刺さりました。
それは、「この国でエンゲージメントは難しい」という一言でした。組織やエンゲージメントを軽んじているわけではない。ただ、深刻な教育格差や貧富の差があるインドネシアでは、エンゲージメント以前に解決すべきことが多い、というものでした。
私はそのご指摘に深く納得したのと同時に、インドネシアの可能性を感じました。当社は学術的な背景と実践的知見、1万社を超える組織のデータベースをもとに、規模や業界を問わず組織変革を支援してきました。だからこそ、「インドネシアだから無理」なのではなく、「組織を変える技術があれば、インドネシアは大きく変わることができる」と知見と実績から確信しています。
連載にあたり皆様の実際のお悩みを伺うべく、事前アンケートを実施したところ、「丹精込めて育てた優秀なローカルスタッフの離職が後を絶たない」「現地拠点の未来を託せる経営幹部が育たない」
「日本人駐在員とローカルの間に見えない壁がある」といった声が寄せられました。
こうした問題を考える際に、国や文化、歴史の違いなどの変えられないものに理由を求めがちです。しかし実際には、背景の違いをきっかけに組織の中で「認識のズレ」が生まれ、必要な手が打たれないまま放置されていることこそが、問題の正体なのです。だからこそ、表面的な出来事だけでなく、組織のどこにズレが生じ、どこを直せば根本から解決できるのかを捉える「メガネ(視点)」を持つことが重要です。例えば、退職理由によくあがる「給与への不満」や「キャリアチェンジ」は、氷山の一角に過ぎません。水面下に隠れている「会社の方針に対する納得感」「上司との日常的な関わり方」「職場の風土」などの課題を構造的に捉えなければ、離職を食い止めることは困難です。本連載では、組織の悩みを考えるうえでの「メガネ」をお伝えし、インドネシアで組織を長期的に発展させていくためのポイントをご紹介していきます。次回は、最もご相談が多かった「優秀な社員の離職防止」を深掘りします。
















PT. Link and Motivation Indonesia 代表取締役社長
松木 翔彦
リンクアンドモチベーショングループ入社後、大手企業向けコンサルティングに従事し、クラウド部門の立ち上げに参画。2025年よりタイ拠点マネジャーを務め、2026年よりPT. Link and Motivation Indonesia代表取締役社長に就任。