前回、優秀な社員の離職を防ぐには「組織の状態」と「残り続ける理由」という2つのメガネで組織と向き合う重要性をお伝えしました。一方、組織の状態が良くても、「会社に残り続ける理由」を見出せていなければ、コミットが弱まり、退職することもあります。
では、どうすれば「この会社に残り続けたい」と思ってもらえるのでしょうか。
陥りがちなのが、「辞めそうになって慌てて理由をつくる」「上司との関係性だけでつなぎ止める」という対処です。個人のつながりが強いインドネシアであっても、急に個人に働きかけて残る理由をつくるのは非常に難しいです。また、信頼している上司が異動・離職すれば、それだけで残る理由が失われてしまいます。
「残り続ける理由」をつくるために重要なのはタイミングです。入社時から「組織の魅力」への共感を紡ぐことが大切です。とりわけ、仕事が人に紐づき、属人性の高いインドネシア企業の組織において、この視点は欠かせません。
加えて、何を理由に共感を紡ぐかも考える必要があります。インドネシアは東南アジアの中でもエンゲージメントが高く、実際に社員からも、前向きな反応が多く返ってきます。しかし、仕事や上司には満足していても、会社の中長期的な戦略には共感していないケースもあります。
つまり全体的にエンゲージメントが高くても、何を魅力に感じるかは人それぞれです。だからこそ採用時から、スキルだけでなく、応募者がどのような「組織の魅力」に共感するのかを見極めることがポイントです。当社では、この魅力を「4P」に整理しています。
例えば、Peopleを重視する人には、「楽しく働ける」「互いに尊重できる」と思える仲間や職場があることが、大きな魅力になります。また、Professionを重視する人には、「この会社だからこそ経験できる」「この分野の専門性を高めたい」と思える仕事や事業に携われることが、残り続ける理由になるかもしれません。
そして、採用時に紡いだ共感を、入社後も育むことが重要です。仕事を任せるとき、評価するとき、昇進や異動をするとき。節目のたびに、自社の魅力と本人の期待を繋ぎ直していく。その積み重ねによって、「この会社に残り続ける理由」が育まれていきます。
優秀な人材を「どう引き留めるか」を考える前に、「何に共感する人を採用し、その共感をどう育て続けるか」を考える。理念や歴史、事業、組織風土など、「ここでいい」ではなく「ここがいい」と思える魅力を磨き上げることが重要です。
その際、従業員との関係が良好な企業や、独自の組織文化を持つ企業の事例をそのまま導入するケースがあります。しかし、他社事例が自社でも同じように機能するとは限りません。自社に合った施策に取り組む上では、まず「組織の状態」というメガネで、何が課題かを捉えることが必要です。次回、「組織の状態」を把握するポイントをお伝えします。
















PT. Link and Motivation Indonesia 代表取締役社長
松木 翔彦
リンクアンドモチベーショングループ入社後、大手企業向けコンサルティングに従事し、クラウド部門の立ち上げに参画。2025年よりタイ拠点マネジャーを務め、2026年よりPT. Link and Motivation Indonesia代表取締役社長に就任。