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【連載コラム】「他社事例」を真似しても離職は防げない?組織状態によって変わる、打つべき施策のポイントとは

前回まで、優秀な社員の離職を防ぐために組織を見る2つのメガネ、「組織の状態」と「残り続ける理由」についてお伝えしてきました。しかし、この2つのメガネで課題を特定できたとしても、すぐに対応策に飛びついてはいけません。

例えば、ある会社で、優秀な営業社員のノウハウを共有する「成功事例共有会」を実施し、成果が上がったとします。ただ、似たように共有会を実施したとしても、自社の組織の状況によって結果は大きく変わります。

エンゲージメントが高く、社員同士の信頼関係がある組織なら、「自分のノウハウがみんなの役に立つなら共有しよう」「自分も他の人から学びたい」と、前向きな場になるでしょう。一方、エンゲージメントが低く、社員同士が互いに不信感を持っている状態では「自分のノウハウをわざわざ教えたくない」「良く分からない会議がまた増えた」と否定的な意見も出かねません。

つまり、「良い施策」があるのではなく、「今の組織に合った施策」があるのです。

取るべき施策は、組織の状態に応じて大きく3つに分けることができます。冷え切った関係性を「繋ぎ直す」、組織の運動神経や体力を「取り戻す」、そして組織の強みを「磨き続ける」です。

先の例で言えば、冷え切った関係性の「繋ぎ直す」状態の組織で組織の強みや成功体験を議論しても反感が生まれかねません。こうした状態であれば、失われた信頼関係を取り戻すことから始める必要があります。

だからこそ、施策を考える前に重要なのが、「今、自分たちの組織はどこにいるのか」を正しく把握することです。そのための一つの方法が、エンゲージメント状態を可視化することです。その際は、「満足度(社員が満足しているか)」だけではなく、「期待度(社員は会社に何を期待しているのか)」まで把握することがポイントです。「その期待に対して、どれだけ満足しているのか」を捉えることで、自社が優先して向き合うべき課題が見えてきます。

他社の成功事例を知ることは、もちろん大切です。しかし、たとえるなら、風邪をひいているときに、いきなり筋トレを始めるようなものです。理想の体になりたい気持ちは大切ですが、まずは基礎体力を取り戻さなければ、体を壊すだけです。基礎が整っていない段階で挑戦的な施策に飛びついても、うまくいきません。

「何をやるか」の前に、「今、自分たちがどこにいるのか」を知る。これこそが、優秀な社員の離職を防ぎ、組織の長期的な発展に繋げるために重要です。なぜなら、「組織の状態」というメガネで捉えたエンゲージメントの高低によって、打つべき処方箋は変わってくるからです。次回からは、組織の状態ごとに起こりがちな症状と、離職を防ぐための処方箋をお伝えします。

執筆者プロフィール
PT. Link and Motivation Indonesia 代表取締役社長
松木 翔彦
リンクアンドモチベーショングループ入社後、大手企業向けコンサルティングに従事し、クラウド部門の立ち上げに参画。2025年よりタイ拠点マネジャーを務め、2026年よりPT. Link and Motivation Indonesia代表取締役社長に就任。