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目覚ましく活躍するBNN コロナ禍でも麻薬事案横行

インドネシアで国家汚職撲滅委員会(KPK)と並ぶ最強の捜査機関といわれるのが「国家麻薬取締局(BNN)」でその活躍ぶりはコロナ禍の2020年そして21年も変わらず麻薬事案の摘発が頻繁にニュースとして伝えられている。

2月9日にカリマンタン島南カリマンタン州バンジャルバル市でBNNが摘発したのは夫妻と娘という家族による麻薬密輸事件だった。押収した麻薬はクリスタル・メタフェタミンやエクスタシーなど約3.2キロと決して多くはない。だが、BNNなどがこの麻薬はカリマンタン島の西北部を占めるマレーシアから国境を越え、北カリマンタン州や東カリマンタン州に流れてきた可能性が高いとみていることが注目に値する。

実はインドネシアに流入する麻薬の大半はマレーシア経由であるといわれている。かつてはマラッカ海峡を海路密輸されるルートが主流だったが両国の沿岸警備と海上警備が厳しくなり、陸路のカリマンタン島ルートが主流となっているというのだ。

かつてはフィリピン・ルートも多かったがフィリピン南部でのイスラム系テロ組織による相次ぐ爆弾テロ事件などの影響で同ルートは「麻薬からテロ」が主流となっている。

 マレーシア経由で流入する麻薬は元をたどればタイやミャンマー、ラオスなどを経由する中国産が大半とされている。報道では今回押収された麻薬も「中国茶」のパッケージの中に麻薬が隠匿されていたという。

何年か前にジャカルタ西方にあるジャワ島沿岸部で麻薬密輸船が摘発された事件があったが逮捕されたのは台湾人だった。かつて日本の海上保安庁主催の東南アジア麻薬会議が定期的に開催され、米麻薬捜査機関担当者なども参加して情報交換が密に行われていた。欧米に流れる麻薬は大半が南米から、そして東南アジア、日本を含む東アジアへは大半が中国からとされ、台湾でも中国からの麻薬密輸ルートの存在が確認されていた。

インドネシアでは毎年、芸能人が麻薬所持や使用容疑で逮捕される事件が大々的に報道されており、BNNも多忙を極めている。

バリ島では現在警察を大量動員してロシア人の捜索が続いている。国際手配されていた大物麻薬犯罪者が逮捕されてバリで服役中の2月11日に移送手続きに訪れたバリ空港入管施設から脱走したという。手引きしたロシア人女性と共に逃走中でバリも大変なようだ。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。ジャカルタ在住。