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民主党の党首にムルドコ氏選出 策士が動いた”内乱劇”の背景

インドネシア政界に衝撃が走った。3月5日に野党「民主党」反主流派が臨時党大会でアグス・ハリムルティ・ユドヨノ党首に代わって新たにムルドコ大統領首席補佐官を選出したのだ。前党首のスシロ・バンバン・ユドヨノ(SBY)前大統領やアグス氏ら主流派は、ムルドコ氏を選出した「大会」が同党の内規に反しており「決定は無効」と主張して反発を強めている。

いってみれば「民主党」の内乱に過ぎないのだが、ムルドコ氏が現政権で重要な地位にあること、アグス氏を2024年の次期大統領選に出馬させ、政権奪取を企図するSBYの思惑などを反映、様々な思惑の存在をインドネシア各メディアは興味津々と伝えている。

表向きの動きをみれば野党に止まり、次期大統領選に影響を行使しようとするSBYとその人脈から政治的影響力を奪取することで政権運営をより安定化させたい、というジョコ・ウィドド大統領の意向やSBYと犬猿の仲である最大与党「闘争民主党(PDIP)」の党首メガワティ・スカルノプトリ元大統領の思惑も指摘されている。

だが、2019年の大統領選でジョコ・ウィドド大統領の対抗馬だったプラボウォ・スビアント氏を国防相として内閣に取り込み、同国防相の「グリンドラ党」は与党に転換、プラボウォ氏とペアを組んだサンディアガ・ウノ氏も観光創造経済相として入閣させ「政敵取り込み」で政権基盤は安定してきた。

そんな中さらに民主党まで「切り崩す」ことがどこまで理解を得られ、実効性があるかは疑問である。民主党党員でもないムルドコ氏の選出、それも正規の手続きを無視した党大会での選出は相当の「無理筋」であり、「クーデター」「内乱」といわれても止むを得ないだろう。

PDIP内部情報では今回の騒動には元国軍司令官のムルドコ氏につながる政界の国軍人脈が裏で動いた可能性が高いという。ルフト・パンジャイタン調整相、プラボウォ国防相、そしてウィラント前調整相という面々という。元国軍幹部のSBYとエリート軍人だったアグス氏につながる国軍のネットワークを完膚なきまでに断ち切る、という軍内部の「派閥争い」の側面があるという指摘だ。

本稿は「深層8」で「クーデターの噂がある策士ムルドコ氏へのアグス党首の力量が試される」と指摘した。策士に「してやられた」のが今回の内乱の実情といえそうだ。