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パプア州で続く緊張状態 最後に残ったDOMの今

コロナ禍の中で「プアサ(断食月)」を迎えているインドネシアは、要所でのテロ警戒は続くもののとりあえず穏やかで敬虔な日々を迎えているといえるだろう。

ところが東端のパプア州ではあまり報道されていないが、不穏な動きが続いている。4月14日にプンチャック県でバイクタクシー運転手が殺害され、その前には地元学校の教師2人も殺害、校舎が放火された。さらに同県空港でヘリが焼かれ、15日には同県で16歳の少年が殺害された。殺害された運転手、教師、少年はいずれもインドネシア治安当局に情報提供をする「密告者」だったと「西パプア民族解放軍(TPNPB)」が犯行声明を出した。もっとも軍は「単なる犯罪者集団による犯行」として武装組織を認めていない。

インドネシアはスハルト政権時代から「アチェ」「東ティモール」「イリアンジャヤ(現在のパプア州と西パプア州)」の3州を「軍事作戦地域(DOM)」に指定して、増派された軍が独立を目指す武装勢力と対決していた。外国勢を含めた報道関係者の現地訪問も厳しく制限され、しばしば軍による人権侵害も伝えられるなどインドネシアの暗部とされた。

しかし民主化の流れの中で東ティモールは2002年5月に念願の独立を果たし、アチェは2004年12月の「スマトラ沖地震津波」の大被害を契機に和平交渉が進展し「イスラム法(シャリア)」を認める特別な自治権を得て武装闘争にピリオドが打たれた。そして最後に残ったのがパプア地方だった。

パプアには「自由パプア運動(OPM)」という武装組織が存在し、1965年以来独立を目指す武装闘争を続けているが、各地方には分派と称する独自の組織が展開して個別に活動するなど全体としての組織力、兵力、作戦、旧式で不十分な武器・装備品などから国軍にとっては「低強度」の紛争とされている。

インドネシア軍の総力を挙げればOPMやその分派を掃討、壊滅に追い込むことはそう困難なことではない。そのため「実戦を伴うパプアの状況を維持することで軍の士気や戦闘能力維持を意図しているのではないか」という穿った見方もあるほどだ。

いずれにしろ、ジャカルタを遥かに遠く離れたパプア州の山間部では武装勢力とパプア人コミュニティー、そして治安部隊との間でこのラマダン期間中も緊張状態が続き、犠牲者が出ているという現実がある。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。ジャカルタ在住。




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