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成功でも失敗でもない 首都脱出禁止令の効果

インドネシアはイスラム教の重要行事であるレバラン大祭とそれに伴う休暇を無事終えて、帰省先の地方都市からのUターンが本格化した。コロナ禍であることもあり、政府などは首都ジャカルタからの帰省を厳しく制限した、はずだった。

ところがジャカルタ州政府によると、帰省禁止措置にも関わらず5月6日から15日までに約260万人がお土産や特別賞与を手に首都圏から帰省の途に就き、うち約173万台の車両が高速道路や他の幹線道路経由で故郷へ向かったという。

そして同時期に約150万台の車両を含めた約220万人がジャカルタに戻ってきた、としている。ブディ・カルヤ・スマディ運輸相は5月13日の時点ですでに150万人が戻り、今後その数は増えて最終的には約300万人が首都圏に押し寄せるとの予測を示したのだった。

レバランが終われば、帰省から戻る人々が大挙してジャカルタに押し寄せるのはコロナ禍でなくても、毎年の恒例である。多くは職を求めてだが、州政府などは「地方から親戚などを連れて来ないように。職は地方で探すように」と訴えているが、人の大きな流れを押しとどめるには「無力」である。

ムハジル・エフェンディ調整相(人間・文化開発担当)はこうした状況を「今年の帰省禁止政策は100%成功した訳ではないが失敗でもない」と評価したようだが、要するに「効果があまりなかった」ということだろう。

地方都市からの人の大きな流れは、ジャカルタのコロナ感染状況にも深刻な影響を与えることが指摘されており、警察は首都圏に通じる約200カ所に検問所を設置して、コロナ感染検査を実施すると同時に、州政府は医療関係機関に対しジャカルタでの一般病床や集中治療室(ICU)の拡充、酸素ボンベ確保など感染者拡大に備えるよう求めたという。

帰省禁止は空路や鉄路、海路では搭乗券や切符が必要なため、一定の効果はあったとされているが、大量の車両やバイクの「波」はいくら警察が検問で引き返しを求めても「焼け石に水」だったようだ。

「ジャラン・ティクース(ネズミの道)」と称される抜け道、う回路などの利用や大挙して押しかけたバイクの帰省を警察が黙認することもあったという。要するに毎年の「光景」が今年も繰り返されただけだった。だから「成功でも失敗でもない」となるのだろう。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。ジャカルタ在住。