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KPKに何が起きているのか 国家原則テスト不合格者を解雇

インドネシアで最強の捜査機関と言われてきた「国家汚職撲滅委員会(KPK)」と「国家麻薬捜査局(BNN)」のうち、公務員などの巨額、悪質汚職に鉈を振るい、国民から喝采を浴びてきたKPKが「迷走」している。

2019年9月に国会で可決した「KPK改正法案」に基づくKPK改革の一環として「KPK職員を国家公務員とする」ために実施された職員に対する「国家忠誠度テスト」で75人が失格となり、内51人が解雇されることになったことが5月27日に判明した。

通常の公務員試験とは異なるテストでインドネシアの国家基本原則である「公平で文化的な人道主義」「全国民に対する社会正義」など5原則からなる「パンチャシラ」の解釈を問うなどのテストだったとされる。

こうした流れの中ではKPKが現職の国会議長や外交官、国会議員など大物の汚職容疑者を次々と逮捕、訴追することに「危機感を抱いた」政治家や国会議員によって「KPKの権力を弱体化」する改正法案が可決され、新たに南スマトラ州警察本部長だったフィルリ・バフリ氏が委員長に起用されて以降、汚職摘発の「牙は削がれた」状態に陥った。

2019年9月の国会での「改正法案」審議には学生や人権団体が反対デモを繰り返し、ジョコ・ウィドド大統領も「懸念」を示したが、結局国会に押し切られた経緯がある。

実際に改正法可決後の2020年1月から6月までのKPKの摘発実績は、半年間で捜査着手が22件で立件まで至ったのは2件と極めて低調に止まっている。

そして今回のテストにより実績と経験のある捜査官らが解雇の憂き目にあっているのだ。2017年4月に現職警察官から顔面に化学薬品をかけられて左目を失明した有能な捜査官ノフェル・バスウェダン氏は「今回のテストはさらにKPKを弱体化に追い込むもので、背後には政治的な陰謀の匂いがする」とKPKを厳しく批判。

非政府組織の「インドネシア汚職監視団(ICW)」も「汚職撲滅を掲げるジョコ・ウィドド大統領の面目を潰す行為である」とバフリKPK委員長を糾弾する事態になっている。これに対し政府側は「否定的な見方をするべきではない。組織強化の一環だ」(ムルドコ大統領首席補佐官)と火消しに躍起となっているが、KPK弱体化を目論む閣僚と大統領との間に溝が生じているとされ、ジョコ・ウィドド大統領の政治手腕に翳りが出てきたとの見方が有力になっている。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。ジャカルタ在住。




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