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在留日本人に迫るコロナ不安と苦悩 一時帰国、ワクチン接種 選択肢は

今、インドネシアに滞在している日本人にとって差し迫った危機としてコロナ感染があるのは間違いなく、一時帰国やワクチン接種に関しどういう選択肢があるのかなど大きな不安と苦悩を抱えているのではないだろうか。

ジャカルタの日本大使館は連日のように連絡メールを発して最新の情報を提供する努力を続けている。しかし一時帰国を希望する日本人に対して調整してきた「特別便」は、日本企業あるいは団体に属していない限り原則として搭乗できない条件付きの「特別便」であり、政府による「救援機」とは異なる。

日系航空会社の定期便に幸運にも座席を確保できた日本人はジャカルタ出発直前に成田空港から名古屋のセントレア空港に向かうことを告げられたという。理由は成田周辺の隔離用の宿泊施設が満員だと説明されたという。同機に搭乗していた五輪関係者、外国人、コードシェアで搭乗した日本人は成田のホテルなどに収容され、それ以外の日本人乗客約50人が名古屋に移送されたというではないか。こうした「差別」に問題はないのか。

既に運航された清水建設社員、家族専用の「特別便」さらに7月21日、25日に各々成田空港への「特別便」の運航が決まった。この「特別便」に搭乗するには「所属する企業、団体が外務省に提出し、承認を受けた誓約書」が必要とされている。

こうした「特別便」でも救済されず、定期便の航空券も予約困難な状況で帰国の目途は立たず、途方に暮れている日本人も多い。個人営業やインドネシアなど外国企業で働く日本人などはどうすればいいのか。日本政府が認めていない中国製ワクチンを接種して果たして今後帰国する際の「接種証明」が有効かどうかは現時点では不明。さらに中国製ワクチンの優先接種を受けたインドネシア医療関係者の感染、死亡も伝えられ、その有効性、安全性に疑問もでている中でワクチンを接種するかどうか、難しい選択にも直面している。

運航される帰国用「特別便」の往路でワクチンを運ぶというアイデアは難しかったのだろうか。大使館にそういう提案をした日本人に対して大使館から「医療関係者が確保できない」との回答があったという。そうなら往路に医療関係者をなんとかして確保して同乗させ日本大使館で日本人を対象としての「接種」が短期間でも可能かどうかの道を探って欲しかった。今後もそうした対応策を検討欲しいと思う。危機にある日本人の命の為に。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。ジャカルタ在住。