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コモドドラゴンがツアーガイド襲う 政府の観光地化にユネスコが待った

 インドネシア東ヌサテンガラ州コモド島やリンチャ島などに生息する世界最大のトカゲで「現代の恐竜」として知られ、絶滅危惧種にも指定されているコモドドラゴン(コモドオオトカゲ)を巡る観光開発が揺れている。
 「国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)」から世界自然遺産に指定された「コモド国立公園」を観光の目玉として世界中からの観光客を呼び込もうと

ジョコ・ウィドド大統領、サンディアガ・ウノ観光創造経済相などが旗振りとなって観光地としての整備を進めていたが、環境への影響が問題としてストップがかかり、計画は変更を余儀なくされている。

そんな中9月28日に、コモドドランゴンの生息域で同僚と作業中だったツアーガイドが地面に倒れ、コモドドラゴンに襲われて負傷する事故が起きた。

地元メディアなどによると襲われたガイドは同僚に救助されて病院に搬送され、命に別状はないものの太腿を負傷して治療中という。2020年12月、2017年にも作業員が襲われる事故が起きたほか、同年にはシンガポールからの観光客が足をかみ砕かれて重傷を負う事故も発生。2021年1月には観光エリア以外にある地元の漁村にいた4歳児が、近づいてきたコモドドラゴンに襲われて手が引きちぎられた。

国立公園事務所などによると、1974年以来少なくとも30人がコモドドラゴンに襲われて負傷し、5人が死亡しているという。

最近はなくなったというが、以前は観光客に「より近くでよりスリリング」に楽しんでもらおうとかなり危険なツアーが行われていたという。

コモドドラゴンの個体数減少や生息環境保護などから、2019年3月には観光地閉鎖を地元州政府などが打ち出した。しかし地元観光業者や住民から反対運動が起きて、白紙に戻った経緯がある。

その後政府の肝いりで観光開発を進めようとしたところ、7月に今度はユネスコから「環境への影響が深刻」とストップがかかったもののウノ観光相は「開発計画の一部を見直し年内完成を目指す」と計画続行を示すなど、コモドドラゴンを巡る動きは二転三転、右往左往しているのが現状だ。

今後コロナ規制の緩和でコモド国立公園を訪れる内外の観光客は増加すると思われるが、くれぐれも注意したい、なんせ相手は「生きた恐竜」なのだから。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。ジャカルタ在住。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。