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サバンからメラウケまで インドネシア東西の果て

インドネシアの広大な領土を表現するのによく使われる言葉に「サバンからメラウケまで」というのがある。

メラウケは東の果てパプア州南部メラウケ県の南端アラフラ海に近い町でパプアニューギニアとの国境にも近い「最果ての地」である。対するサバンは西の果てでスマトラ島北端のアチェ州、その州都バンダアチェから船でたどり着くウェ島にある。コロナ禍で国内移動に制限がかかっていたこともあり、メラウケやサバンを訪れたことのある在留日本人はあまりいないのではないだろうか。

かく言う筆者もメラウケは未知の地であるが経度をみると北端にある州都で何度も訪れているジャヤプラの方が東の果てにみえる。

サバンは訪問したことがある。年月日は忘れたが、第4代ワヒド大統領の現地訪問に合わせた取材旅行だった。サバンでは「インドネシア最西端の地」の記念証明書を購入できる。実はサバンはインドネシアの北端の地でもある。カリマンタン島北部マレーシア国境に近い北カリマンタン州のタラカン、南シナ海のナツナ諸島より緯度はサバンが上なのだ。

となると残るは南端だがこれは東ヌサトゥンガラ州の州都クパンの南にあるロテ島になるだろう。クパンまではメガワティ大統領の地方視察に同行して訪れたことがある。

なぜこうしたインドネシアの東西南北を考えたかというと、ジョコ・ウィドド大統領が打ち上げている新首都計画の位置を確認したかったからである。新首都の予定地はカリマンタン島東カリマンタン州バリクパパンの北西に位置するパンジャム・パサール・ウタラ地方北部とクタイ・カルタヌガラ地方一部の地域とされている。この地帯はインドネシアの南北のほぼ中心にあり、東西の中心に近い(距離的な中心はマラッカ海峡になる)のだ。つまり新首都は広大なインドネシアの東西南北の中心という至って地理的要因で選定されたものだったということがわかる。

広大な熱帯雨林の開発が始まっているようだが、首都建設予定地の近くにはオランウータンが生息するクタイ国立公園がある。豊かな自然を破壊し、希少動物の生息地を侵食してまで建設する新首都であることにジョコ・ウィドド大統領は心の痛みを感じないのであろうか。というより首都移転の必要性が本当にあるのだろうか、今一度真剣に検討してみる必要があるだろう。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。ジャカルタ在住。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。