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【熱狂諸島】関根章裕氏|「KINTAN」「しゃぶ里」をインドネシア全国で展開

日本の食文化を通して、世界中の人々の生活をより豊かなものに

現在(2017年11月時点)、インドネシアに直営9店、フランチャイズ18店、計27店舗を展開。

2号店出店までは1年を要している。最初から多店舗展開をすることを前提に、味の標準化や今後店長になりうる人材の育成など、ノウハウを蓄積するのに時間を要したからだ。しかし、そこからは横展開なので早かった。2年目でジャカルタ特別州内に6店舗開業し、3年目にはフランチャイズ化。インドネシアでは信頼できるパートナーを見つけ出店、他にもシンガポール、カンボジア、フィリピン、台湾など海外進出も加速した。

国内で早期展開ができたのは、輸入品に頼らず可能な限りインドネシア国内産に早期に切り替え進めたおかげでもある。インドネシアは輸入品に厳しく、場合によっては輸入許可の取得に半年以上かかる。その上、中身は同じでもパッケージが変わっただけで、再登録が必要となったりする。機材・食材共に、可能な限り国内調達にすることで、時間ロス、在庫切れリスクを最小限に抑えることができた。

新鮮野菜を提供してくれるインドネシア現地の農家のみなさん

初めてのラマダンでは、インドネシア人スタッフが断食中のため味見ができず、味のブレが生じるという初めての経験も。急遽、私やシェフが店舗に入り、常に味のチェックをすることで対応したが、その経験から、現在はセントラルキッチンで数種類のコア・アイテムを調理・管理し味の安定化を図っている。

また、ラマダン中は通常は日中の客数が減り、日没直後の時間に客足が集中するため、ディナーの回転が難しく、一般的に外食業には厳しい時期だ。そんな中で売り上げ最大化を図ることを考え、席効率、予約マネジメント、メニュー戦略により、実は初年度最大の売り上げはラマダン中に記録した。

スタッフの問題で一番苦労したのは、フランチャイズ展開する時だった。優秀なオープニングスタッフに恵まれたが、彼らは「しゃぶ里」「KINTAN」に対し『自分たちが作り上げたブランド』という思い入れと誇りを持っていた。その分、フランチャイズ展開の話が進む中で「我々のブランドを売ってしまうのか?」との不安や不満が大きかったのだ。「お客様にとって店舗数が増えるのは嬉しいこと。それにはスピードも大切。パートナーと組んで展開してゆくことは、お客様のためになる」と根気強く説明したが、開業時から苦楽を共にしたコアスタッフでも離れてしまう人財がいた。ステージが変わる段階では仕方のないことではあるが、今でも非常に残念に思っている。

4年目の今は、ブランド価値を維持するため人材育成と、安定的なQSCを実現するためオペレーションのワンスタンダード化に注力。人事については、店舗数が増えた今、皆をフェアに評価するために、評価システム、トレーニングシステム、パフォーマンスを連携させ、給与に反映している。

オペレーションでは「売り上げ」、「コスト」、「QSC(クオリティ・サービス・クリンリネス)」の3つで、ポイントとなる目標数値を設定し、日次報告を義務化。例えば、売り上げ報告を翌日確認した際に、ディナー客数が異常に少なかったら翌日すぐに要因を確認。デモなどの外的要因ではなく、内的要因だと思われる場合はエリアマネージャー以上が店舗に行き即改善するという一連の流れを徹底。お客様アンケートも日時での目標設定をし、日々改善を続けている。

フランチャイズパートナー先へも同様で、月1回の会議に加えてQSCチェックとクオリティチェックを行っているほか、現場へ入り込んでのトレーニングもやらせてもらっている。もちろん企業文化の違いもあるが、お互いの違いを尊重しつつ、ブランドとしてどうあるべきかについては相互理解を持ち、双方が歩み寄る努力をすることが大切なように感じる。

今後は、バンドンなどの地方都市に出店予定。物理的距離があり目が届きづらくなった時のマネジメントやハラル化がこれからの課題となると考えている。

インドネシア、そしてアジアの飲食業界をより良くしたい、というのが今の私個人の夢。今後は、私自身が体験を通して得た知識や経験を、出版やセミナーなどで伝える場を仲間たちと作っていくことで、お客様やスタッフ、サプライヤー様を含めた飲食業界全体がより良くなることに貢献していきたい。「食を通してすべての人を笑顔」にする為に役立ちたい、そう思っている。

(2017年:週刊Lifenesiaに掲載)