スマトラ島縦断高速道路(トランス・スマトラ)の一部区間で、ゾウが通るためのトンネルが設置されている。この地域には絶滅危惧種のスマトラゾウが生息しており、高速道路の建設によりゾウの移動ルートが遮断されないようにと、高速道路の下にゾウ専用のトンネルが作られたのだ。
ゾウのトンネルが設置されたのは、2017年に建設が始まり2020年に開通したリアウ州州都のプカンバルから沿岸の都市ドゥマイを結ぶ区間。この区間は全長131キロに及び、この年に開通した国内の高速道路の中で最長である。国営建設フタマ・カルヤの子会社によって建設され、ゾウのトンネルが5つ設置されている。動物専用のトンネルがある高速道路は、インドネシアでこの区間が初めてだという。
知られているように、スマトラゾウはインドネシアの生物天然資源と生態系の保護に関する法律「1990年第5号」により保護動物に指定されている。しかしながら、WWFインドネシア(世界自然保護基金)の研究によると、25年間でスマトラゾウは生息地の70%を失い、生息数は半分以下に減少した。
フタマ・カルヤの担当者は「ゾウのトンネルによってゾウだけでなく他の動植物の生息地も守ることができ、スマトラの生態系を維持することができる」と述べている。
トンネルの建設にあたり、同社は動植物ネットワーク協会がもっていたGPSを基にした道路建設予定地におけるスマトラゾウの行動データを活用し、トンネルを設置するのに最も効果的なポイントを選定した。他国で作られたゾウのトンネルが、ゾウには小さすぎたり、実際に使われていなかったりしたことを踏まえ、本当に機能するものになるよう設計された。その結果、トンネル建設後の調査では、実際にスマトラゾウが通っている姿が確認された。また今でも、トンネル付近にゾウの好む植物を植えるなどの活動を定期的に行っている。