国際的NGOである「国境なき記者団(RSF・本部パリ)」が毎年公表している「世界報道自由度ランキング」の2022年版が5月3日に明らかなり、インドネシアは世界180カ国・地域の中で117位となり、昨年の113位から後退した。ちなみに1~3位はノルウェー、デンマーク、スウェーデンが占め日本は71位、米国は44位、中国は175位、最下位の180位は北朝鮮である。
東南アジアではタイが115位、マレーシアが119位、シンガポールが139位、フィリピンが147位、ミャンマーが176位などとなっている。
このランキングは、RSFによると「政治分野」「経済分野」「社会文化分野」「法規制」「ジャーナリストの安全」の5項目で評価し、報道機関やジャーナリストの活動の自由度を評価したものだ。
インドネシアでは1998年までのスハルト長期独裁政権時代にはメディアは厳しい検閲と規制の前に「官製報道」がまかり通り、反政府の記事執筆、掲載などで抵抗したメディアは発禁処分となり、記者は政府系記者協会から追放された。
その後の民主化でインドネシアの報道界は自由を謳歌する時代となったが、乱立した玉石混交の報道機関、素人同然で報道倫理のかけらもない記者などの出現により、政府側は危機感を高め反政府、反治安当局、反イスラムなどの立場から規制を徐々に強め、現在ではメディア側の自粛や権力への忖度が目立つようになってきた。
ランキングを下げた背景のひとつにパプア報道があるとされている。インドネシアに駐在する外国報道陣は、パプア地方取材・訪問には当局の許可が必要不可欠となっている。治安当局は「記者の安全確保のため」と説明しているが、独立を求める武装組織による抵抗運動、治安当局との戦闘が続いていることから勝手な取材、行動を許さないことが理由といわれている。
スハルト政権崩壊後、一時パプア取材は自由になったが現状は逆行しているのだ。
外国人として肌身で感じる自由度からするとマレーシア、フィリピン、タイでの取材はとくに厳しい制限もなかったが、シンガポール、ラオスは規制が許容範囲を超えていたという記憶がある。インドネシアでは1998年以前は反政府運動が続くアチェ、東ティモール、パプアの独立運動は取材許可を得るのが一苦労で、現地取材は監視されたのだった。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。ジャカルタ在住。