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不正受給の日本人容疑者が潜伏か ツテや土地勘が不可欠 インドネシア

このところインドネシアの在留日本人の間では1人の日本人の話題で盛り上がっているという。コロナ関連で約10億円の不正受給に関与し、日本の警察から指名手配を受けている主犯格の男性容疑者がインドネシアに逃亡し、潜伏しているのだ。ところが6月8日にスマトラ島南部ランプン州で潜伏中に逮捕されたとのニュースが流れた。

かつて日本で犯罪容疑者として指名手配を受けた容疑者の逃亡先としてはフィリピンそしてタイが主流だった。入国が容易なこと、銃器などが簡単に入手可能なこと、容疑者を匿う反社会的勢力の関係者が滞在していたこと、容貌の似た中国人コミュニティーがそれなりの社会的地位や組織力があることなどがその理由とされていた。

この容疑者は2020年10月にインドネシアに向けて日本を出国している。当時はコロナ禍でインドネシア入国にはビジネスビザが必要だったというから、この容疑者はインドネシアに拠点、土地勘なり知人なりがいてその支援で入国を果たした、とみられている。

その後も消息が不明なのはこの入国時に支援した組織あるいは個人が容疑者を意図的に匿っている可能性が高く、共犯に問われることもありうるだろう。

もともとインドネシアでいろいろなビジネスに携わっていたとの情報もあり、ある程度のインドネシア語が話せ、インドネシア人の知り合いもいたと推測できることから、インドネシア人社会の中で息を潜めて嵐が通り過ぎるのを待っている可能性は高い。

知り合いの日本人飲食関係者によると、最近来店する客の間でこの事件は話題となっているが、各種日本人のコミュニティーで容疑者の関連情報が全く出てこないことなどから、やはりインドネシア人あるいはインドネシア治安当局関係者の庇護を受けての潜伏という可能性も否定できないだろうという。申し訳ないが給与も低いインドネシアの警察官が「金銭に弱い」のも事実である。

かつてはレストランやホテルで警備にあたる警察官や兵士のアルバイト姿が多くみられ、海外からのビジネスマンの要望に応じて白バイ、パトカーの先導・警備も小遣い稼ぎとして行われていた。かつてインドネシアで犯罪に関わったり日本から逃亡したりした容疑者は、ほぼ全員が最後は司直の手にかかっている。

「天網恢恢疎にして漏らさず」という諺の通り容疑者が永遠に逃げることは無理だった。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。ジャカルタ在住。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。