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ボロブドゥールの入場料騒動 インドネシア得意の朝令暮改

ユネスコの世界遺産に指定されたボロブドゥール遺跡への観光客の入場料を巡るニュースが駆け巡った。

ことの発端はルフット・パンジャイタン調整相(海事・投資)が値上げ方針を自らのSNSで表明したことである。たちまちその方針は各方面に伝わり、反対論、慎重論が噴出する事態になったのだった。というのもその値上げ幅大きく、今後のボロブドゥール遺跡への観光客の減少、停滞が十分に予想される新規の入場料だったことが原因なのだ。

入場料の現行はインドネシア人が5万ルピア、外国人は25ドル、インドネシア人学生は2万5000ルピアとなっているが、調整相が明らかにした新料金はインドネシア人が75万ルピア、外国人は100$に、一方でインドネシア人学生は5000ルピアに値下げするとともに一日の入場者を1200人に制限するというものだった。現在は1日約1万3000人が訪れている。

世界最大級の仏教遺跡であるボロブドゥール遺跡は近くのヒンズー教遺跡であるプランバナン遺跡とならんで中部ジャワの主要な観光スポットで、ジョグジャカルタやソロに宿泊して時間をかけて訪れたり、バリ島から国内航空路線を利用して日帰りで訪れたりするツアーもある。それなのに外国人観光客の入場料は4倍、インドネシア人も15倍である。

インドネシア人、外国人の観光客にとっては「必ず訪れたい観光スポット」の筆頭格であり、同時にドル箱でもあるのだ。それなのに何を考えて大幅値上げと人数制限、非常識ともいえる方針だ。

遺跡近くのホテルに宿泊して早朝訪れるボロブドゥール遺跡の上部から眺める朝日は「絶景」であり、基壇を巡りながら仏陀の生涯を辿り、行きついた上部のストゥーパで仏像に触れるなど魅力満載で在留日本人も一度は訪れたことがあるだろう。

今回の値上げ方針には中部ジャワ州のガンジャル州知事、そして国会までもが反対、再検討を求める事態となりルフット・パンジャイタン調整相は「1年後に再検討する」と事実上値上げ撤回に追い込まれた。

事前の根回し、下準備、事前の相談がなかったためでインドネシアの得意の「朝令暮改」の典型といえるだろう。ただインドネシア政府や為政に「朝令暮改」を「反省」する動きはない。「ティダアパアパ」「ムダムダハン」に代表される対応は、それがインドネシアのいいところなのかもしれないとも感じている。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。ジャカルタ在住。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。