インドネシア警察の悪弊がまた明らかになった。リストヨ・シギット・プラボウォ国家警察長官は10月23日の会見で「警察幹部や高官は部下からの金品を受け取ってはならない」として警察内の奥深くに蔓延する「習慣」を今後改めるよう指示したことを明らかにした。金品は昇進や人事厚遇、出世に繋がる警察大学進学を目的としているという。
わざわざ会見して国民の前にこうした警察内部に残る「悪弊」の排除をアピールしなければならなかったのはなぜだろう。
もちろん警察内部のこうした習慣が排除されることは歓迎されているものの「言うだけで改まらない」「より巧妙に水面下で続くだけ」などと冷めた見方があるのも警察への国民の不信の表れといえるだろう。
さらに国家警察は交通違反の摘発現場で警察官が罰金を徴収することは今後一切行わないとの方針も明らかにしている。
交通違反の時に警察官から法外な罰金支払いを現場で求められたり、違反がなくてもレバランやクリスマス、年末年始などにかこつけては現金を暗に要求された経験は多くの在留日本人が経験していることだろう。
そうした現場での「賄賂」要求という「悪弊」の禁止も打ち出した警察には一体どれほどの「悪しき習慣」が依然として残っているのだろうかと勘繰りたくなる。
こうした警察のある意味「恥を晒し」てまでの「改革宣言」の背景には最近の相次ぐ不祥事に対するジョコ・ウィドド大統領など政権内部からの不満があるとみられている。
よく言われる国民の間の不信感増大などが理由である訳がない、上からの権力に弱い権力組織が警察の実態であることは肝に命じておくべきだろう。
幹部が部下の警察官を射殺したとされる「サンボ事件」、東ジャワ州サッカースタジアムでの不要な催涙弾発射で多数の死傷者を出した事案、そしてその東ジャワ州警察本部長に抜擢された高官が就任後に麻薬犯罪関与で逮捕されるなどこのところ不祥事が相次いでいる警察である。
そうした不祥事の連続、警察内改革も政府やマスコミが11月8日からのASEAN首脳会議、15日からのバリでのG20首脳会議、違法シロップによる急性腎不全で子供の死者が出た薬害事案そして2024年の大統領選に向けた各政党の動きに埋没しようとしているようにみえる。意に介していないとはいえ国民の厳しい目を警察は銘肌鏤骨すべきだろう。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。