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G20 ジョコ・ウィドド大統領 場所貸しもなんとか面目保つ

11月15、16日にバリ島で開催されていた主要20カ国・地域首脳会議(G20首脳会議)は無事に終了した。無事というのはテロや事件事故などに見舞われず安全に終わったという意味ではあるが、不測の事態としてポーランドにロシア製のミサイルが着弾して2人が死亡したというニュースだろう。

ロシアが意図的にポーランドにミサイル攻撃すればNATO(北大西洋条約機構)は集団的自衛権を行使する可能性もあり、16日はG20会議どころかG7とNATOによる緊急首脳会議が開催され、報道陣もてんやわんや、右往左往となった。

しかし米バイデン大統領が「ロシアからの弾道とは思えない」と発言して緊張は緩んだ。

米中首脳会談、日韓米首脳会談などG20開催に参集した各国首脳間での会談も活発に行われた。蚊帳の外だった議長のジョコ・ウィドド大統領は「G20は政治的な協議の場ではなく経済問題を協議する場だ」と苛立ちをみせたが、国際政治は不測の事態を静観して経済問題を協議するほど甘くないことを知るべきだろう。事前の予想通りの「場所貸し」的な側面もあった。

ロシアのプーチン大統領は欠席してラブロフ外相が代理出席するも15日夜に帰国の途に就き16日には代理の代理が出席。

しかし採択が危ぶまれた首脳宣言は、ウクライナ情勢を巡る「両論併記」でなんとか採択に漕ぎつけた。さらにジョコ・ウィドド大統領肝いりのイベントだったマングローブの植林と視察もなんとか実現することができた。

ウクライナのゼレンスキー大統領もオンラインでの参加を果たし、ジョコ・ウィドド大統領としては何とか面目を保った形となった。

ただジョコ・ウィドド大統領が目玉としていたジャカルタ~バンドン間の高速鉄道への中国の習近平国家主席と一緒の試乗は実現せず、バリ島からのオンライン視察という苦肉の策でとにもかくにも高速鉄道の現状を習近平国家主席に視察してもらうことには成功した。これも「なんとか面目を保った」ことといえるだろう。

ただ残念だったのはカンボジアでのASEAN首脳会議、タイでのAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議の狭間だっただけに、世界から集まった報道陣や各国関係者にバリ島を観光したりする時間的余裕がなかったことだろう。空港から首脳会議会場、首脳の宿泊先だけの往復ではバリ島の本当の良さはわからないだろう。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。