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生産者の笑顔が目に浮かぶ アチェ発エシカルなコーヒー直売店が日本初進出|LE GAYO COFFEE

欧米では浸透している「買い物は投票」という考え方。私たちの日常の小さな選択のひとつひとつが環境や未来に大きな変化を生むという意識が、日本でも確実に高まっている。一杯のコーヒーの背景にある生産者の苦悩、努力、社会課題への取り組みを知ることは、消費者の権利であり責任でもある。

日本進出を間近に控えた「LE GAYO COFFEE」の創業者に、商品ならびにアチェの地元農家への思い入れ、企業としての取り組みについて聞いた。

話者プロフィール
Mohammad Fahmi氏
LEGAYO COFFEE 創業者/CEO
スマトラメダン出身。テキサス大学オースティン校卒業、地質学修士号取得。石油・ガス会社で探鉱地質学者として15年以上勤務。趣味は旅行で、旅行とコーヒー愛好家妻のRaphaelleと共にコーヒー事業を営む。
編集部
まずはご自身と「LEGAYO COFFEE」をご紹介いただけますか?
Fahmi氏
地質学者として石油・ガス業界で働き、10年程海外各国を転々としてきたのですが、数年前からインドネシアに戻って起業したいと考え始めました。妻も私も大のコーヒー好きであること、また母の出身地が良質なアラビカ種のコーヒー産地として世界的に有名なアチェということもあり、起業するならコーヒー業界ということは以前から決めていました。コーヒー業界と一口にいっても栽培からカフェ経営まで色々ありますが、味を決めるキープレイヤーとして携わりたいという思いで、精製処理を中心に行う「LEGAYO」を2019年にスタートさせました。社名には、妻の故郷フランスの文化とインドネシア文化を融合させる意味で、フランス語の定冠詞「LE」と地名「GAYO」を合わせました。
編集部
御社のコーヒーの特徴を教えてください。
Fahmi氏
弊社では農場の状態、生産性、品質などを総合的に見て厳選した特定の農家から仕入れた高品質のコーヒーチェリーを使用し、スペシャルティコーヒーのみを生産しています(注1)。精製された豆をQグレーダーのもとに送り評価してもらいますが(注2)、平均して83〜85の評価をいただいています。

注1:スペシャルティコーヒー:産地個性や情報の透明性があり風味が素晴らしいコーヒー。アメリカスペシャルティコーヒー協会(SCAA)が定めた評価基準・手順に従い80点以上を獲得した豆のみがスペシャルティコーヒーと認められる

注2:Qグレーダー:スペシャルティコーヒー協会が定めた評価基準・手順に従ってコーヒーの品質の評価ができると認められた国際資格を有する技能者

Fahmi氏
精製方法は、ナチュラル、ウォッシュド、セミウォッシュド、ハニー製法の4通りです(注3)。同じチェリーを使用しても、精製方法によってハード、スムース、クリーン、フルーティ、スパイシーなど、特徴が大きく異なるコーヒーができます。精製方法を変えることで個性と多様性を生み出せることが精製処理の一番の魅力だと感じています。

注3:ナチュラル(乾燥式):コーヒーチェリーを果実のまま乾燥させる方法
ウォッシュド(水洗式):コーヒーチェリーの果肉と粘質物(ミューシレージ)を除去した状態で乾燥させる方法。機械を使って果肉を除去したのち、水を使って粘質物を洗い流す
セミウォッシュド(半水洗式):果肉を除去し、粘質物を残した状態で乾燥させる方法。パルプドナチュラルと同じ
ハニー:精製方法は、パルプドナチュラルと同じ。粘質物を残す度合いによってホワイトハニー、イエローハニー、レッドハニー、ブラックハニーと細分化される
(参考:https://www.kohikobo.co.jp/pedia/162/

編集部
どのような基準で農園を選んでいますか?
Fahmi氏
農園を見極めるポイントの1つ目は、農園の状態。いかに良く手入れされているか、清潔に保たれているかを見ます。

2つ目は、育てている品種。ブルボン種、ティピカ種、アテン種、ハイブリッド・デ・ティモール種など、ガヨの気候や地質に適した品種を育てている農園を選んでいます。

3つ目は農園の成熟度。コーヒーの木は植え付けから5〜20年目頃が収穫の最盛期となります。その農園が最盛期を迎えているか、品質が安定しているかをチェックしています。4つ目は生産性。適切な規模、健康な運営で、安定した供給が可能かどうかも大切なポイントです。

Fahmi氏
すべては農園から始まります。高品質の原材料があって初めて最高のコーヒーを生み出すことが可能になります。最高峰のアラビカコーヒーを作りたい。そのためには農園やチェリーの選定といった最初の段階から正しいことをすることが必要であると信じています。農家の人々には、最高のスペシャルティコーヒーを作るという目標を共有し、焦らずに熟した実だけを丁寧に収穫することなど、ご理解いただいています。どの工程であれ手を抜けば見抜かれます。反対に正直に献身的に仕事をすれば、それが結果に表れます。

編集部
ドイツ、オランダ、フランス、アメリカ、クウェートで直売されていますが、きっかけは?
Fahmi氏
商品に対して豊かな知識を有する生産者から直接、商品と情報を入手したいという、ビジネスオーナーや消費者のニーズに対応するために始めました。お客様の方からご連絡をいただくケースも多く、消費者が生産者を探し選ぶという時代の潮流を感じています。
Fahmi氏
インドネシア国内の顧客基盤は、高品質のアラビカ種に馴染みのあるヨーロッパ、アメリカ、韓国、日本の方々が中心で、お土産やプレゼント用にご購入いただくことも多いです。バリ島に旅行にいらっしゃったご親戚の方を介して弊社のコーヒーを知ったというクウェートの方からご連絡をいただいたことがきっかけで、クウェートでの販売も開始しました。クウェートでは商工省や王室の方々に、弊社の商品を納めさせていただいたこともあります。
Fahmi氏
日本市場への進出も、ジャカルタで日本人向けのワークショップを開催した際に通訳としてお手伝いくださった日本人ご夫妻が、弊社のプロダクトの品質に大きな信頼を寄せて下さったことがきっかけです。
編集部
御社のバリューについて、具体的な活動内容を交えてお話いただけますか?
Fahmi氏
弊社のバリューの1つ目は品質。どの商品に関しても、品質の高さは自信を持って保証することができます。

2つ目はサステナビリティ。精製処理過程では、除去される大量の果皮、果肉、パーチメントが廃棄物となりますが、その廃棄物を水質汚染や土壌の酸化といった環境への影響を省みずに、川や空き地に投棄する業者もあるのが現状です。弊社では精製処理過程で発生する廃棄物を保管し、バクテリアを加えて堆肥化し、農家に配布しています。廃棄物を堆肥としてリサイクルすることで、農家の経費削減に貢献するとともに、化学肥料の使用量低減も可能にしています。

3つ目は女性の社会的地位の向上。ガヨには収穫期に得られる収入に極端に依存し、それ以外の時期は借金で生計を立てる農家が多く、その結果収穫期の収入は借金の返済に費やされ、実質的な収入とならないという悪循環が問題となっています。年間を通して自立した生活を維持できるように改善するための長期的支援策として、雇用機会を増やすことに着目しました。チェリーの収穫、チェリーの収穫段階での選別、精製処理後の豆の選別の3つの作業を、外部からの季節労働者や業者に委託するのではなく、地元農家の家族の女性たちに任せて彼らの収入源を増やすことで、少しずつですが経済状況の改善がみられるようになりました。彼女たちは業者よりも作業が丁寧なので、私たちも助けられています。4つ目は直接販売と公正な取引です。各地に拠点を置き、お客様に商品を直接お届けすることで中間マージンを抑え、市場価格より10〜15%高値で農家からチェリーを買い取り、生産者にとっても公正な流通構造を確立することを目指しています。

Fahmi氏
お客さまにも、品質の良いコーヒーを楽しみながらサステナビリティ、女性の社会的地位の向上、農業の持続的発展といった社会課題の解決に貢献できることを喜んでいただいています。私たちのプロダクトを信頼してくださる方々、努力と姿勢に賛同してくださる方々は私たちの仲間、家族だと思っています。
編集部
日本市場での販売はいつ開始されるご予定ですか?
Fahmi氏
2023年2月のオープンを予定しています。ナチュラル、ウォッシュド、セミウォッシュド、ハニー製法の全4種を、日本国内販売用限定パッケージで販売予定です。日本国内でも良質のコーヒー、スペシャルティコーヒーにフォーカスしたロースタリーやカフェに対する消費者の需要の高まりは留まりをみせず、日本市場に進出する良いタイミングだと判断しています。産地、数量、品質のすべてにおいて限定されたプロダクトなので、品質を第一に尊重しながら、無理なく自然に成長していければと願っています。

企業情報

運営組織 LE GAYO COFFEE
Webサイト 公式サイト
https://legayocoffee.com/
日本向けECサイト
https://legayocoffee.jp/
インスタグラム @legayocoffee.jp