バンジャルヌガラ県とウォノソボ県の間に位置するディエン高原は、中部ジャワ州の園芸農業が盛んな地域のひとつ。コミュニティの人々の多くは生計を農業で賄ってきたが、最近では政府によってディエン高原の観光地化が推進されていることもあり、観光業も大切な収入源となっている。ディエン高原は、ディエン族がジャワの伝統と文化をしっかりと守り続けている場所でもあり、独自の文化的伝統も豊富に残されている。そのうちのひとつにドレッドヘアとルワタンの伝統がある。
ドレッドヘアが持つ意味は民族によって大きく異なる。ギンバル(Gimbal)と呼ばれるドレッドヘアを持つ子供たちは、この地域では、ディエンの伝説の王であるキアイ・コロデテに選ばれた子、またはその化身であると信じられ、繁栄の象徴として特別扱いされる。ドレッドヘアの子供が多ければ多いほど、地域が豊かに反映すると信じられており、彼らは地域を守る「魔法の子供たち」と呼ばれている。
それだけに髪を切るのも一大事であり、地元のコミュニティによって「ドレッドロック・ルワタン」と呼ばれる伝統的な儀式が年に1回開催され、地域の指導者や特別に任命された人によって髪が切られる。地元の人々のなかには、この儀式を行わなかった子供たちは成人後に精神障害を患うと信じる人もいる。