バリ島観光当局がこのほど、2024年1月1日からバリ島に入島する全ての外国人観光客を対象に1人あたり10ドル(約1400円)を徴収すると発表した。
国内外から入島する全ての外国人が対象とされていることから、ITASを保持している邦人駐在員なども対象になるとみられる。徴収された入島税は、バリ島の文化保全や自然環境保護に充てられるという。
日本でバリ島が一大ブームとなったのは、90年代からだったと記憶している。「最後の楽園」「神々の宿る島」と呼ばれたバリには、綺麗なビーチや雄大な自然、独特な文化を求め、日本からも観光客が大挙して訪れた。筆者も90年代から度々バリ島を訪れている。2002年、05年には爆弾テロ事件が起き、甚大な被害が出たが、その都度バリの人々は力強く立ち上がり、前を向いてきた。
しかし、コロナ禍の影響はさすがに大きすぎた。コロナ禍前の2019年には620万人強の外国人観光客がバリを訪れていたが、2021年には1~10月で45人という記録的な少なさまで落ち込んだ。この数字は経済の大半を観光業に依存しているバリ島にとって、大打撃だった。そして、コロナ禍の厳しい規制下に置かれた状況から、昨年200万人を記録し徐々に立ち直りつつあったこのタイミングでの入島税の発表だ。是非はともかく、タイミングについては議論の余地が残るだろう。2022年にはコモドドラゴンで有名なコモド島の入場料を25倍にするといった方策が発表されたが、結局地域住民の猛反対により撤回となっている。
バリ州のイ・ワヤン・コステル州知事は「バリを、地元文化を尊重する質の高い観光客が集まる観光地に変えるつもりだ」と述べ、あくまでバリ島の魅力を維持するための財源確保の一環であるとの姿勢を示している。
バリ島を助けるという意味では決して高くない金額だが、他の観光地に目を向けるきっかけにもなり得る。圧倒的にバリ島が有名であるが、インドネシアには他にも多くの魅惑的な観光地がある。先述のコモド島に加え、ボロブドゥール遺跡やプランバナン寺院などの世界遺産を有するジョグジャカルタ、世界中のダイバー垂涎の海が広がるブナケン海洋国立公園やラジャ・アンパット諸島、水上マーケットやオランウータン保護区があり首都移転先として話題のカリマンタン島、素朴な風情残るギリ3島及びロンボク島などなど、挙げれば枚挙にいとまがない。そのあたりも折にふれて触れていこうと思う。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。