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南海の女王の禁断の部屋を見学 ジャワ海の伝説プラブハンラトゥ

ジャカルタから高速道路を一路南下、ボゴールに入る手前をスカブミ方面に走り、途中からインド洋に面したリゾート地プラブハンラトゥに向かい約4時間で現地に到着する。

日本の戦後賠償で建設された、中心となる「サムドラビーチホテル」には一般客が決して宿泊できない特別な一室がある。

ホテル建設中に火災があり、これが伝説上の南海の女王「ニャイ・ロロ・キドゥル」の怒りに触れたとして当時のスカルノ初代大統領の「女王のための特別室を設けるように」との指示に従ったのが由来という。

ホテル3階にある308号室とされる特別室ドアには「private(プライベート)」とだけ表示され、ドアは施錠されている禁断の部屋である。ホテルスタッフや警備員に見学を申し出れば、先客がおらず行事中でなければ原則見学は可能だ。

その禁断の間はベッドカバーも装飾品、祭壇も南海の女王が好む緑色を基調とした色にあふれ、仄かに香の匂いが漂う神秘的な部屋だ。肖像画の中の魅力的な女王も緑色の服をまとっている。室内には由縁あるスカルノ大統領の肖像画も飾られている。

「ニャイ・ロロ・キドゥル」にまつわる伝説は広くジャワ人の間に広まっており、インド洋に面したジャワ島南岸、特にジョグジャカルタ南の海岸では緑色のTシャツや洋服を着ていたり、泳いだりしていれば海中に引き込まれ海底の女王のもとで共に生涯を送るとの言い伝えが残り、海に入る人や緑色の服装で海岸を歩く人を見かけることはまずない。

ジョグジャカルタ州知事も兼務するハメンクブウォノ家の歴代王は南海の女王と一夜の契りを結ぶことで王として承認を得るといわれているのだ。禁断の間にある女王肖像画と酷似した肖像画が、スカルノ初代大統領の長女であるメガワティ・スカルノプトリ元大統領のクバグサンの自宅居間に飾られている。

あまり日本人が行かないプラブハンラトゥはおすすめの隠れ家的リゾートである。海岸線には新鮮なシーフードを提供するレストランもあり、サムドラホテル前のビーチには海水浴を楽しむ観光客やサーファーの姿がみられるが、もちろん緑色の水着やTシャツを着ている人はごくまれである。インドネシア・ジャワの伝説の世界に触れてみるのも一興だと思う。宿泊客でなくても受付で丁寧に請えば禁断の部屋見学は可能だが、心づけを忘れないようにしたい。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。