国際的な課題の一つである気候変動問題の緩和やそれへの適応のために、インドネシア政府は2060年までのカーボンニュートラル実現、2030年までの32%(国際支援がある場合は43%)の温室効果ガス(GHG)削減を目標に掲げている。化石燃料への依存がいまだ強い、世界でも有数のGHG排出国であるインドネシアにおいて、実際にはどのような取り組みが進められているのだろうか。そして日本企業には今何が求められているのだろうか。
話者プロフィール
総合商社、コンサルティングファームを経て2022年ABeam Consulting Japanに入社。昨年国営ゼネコン企業を対象に開催されたJETRO主催のGXワークショップに登壇する等インドネシアでの支援を開始し、2024年1月より駐在。日本での実績と見識を活かし、インドネシアにおけるGX事業の拡充・強化に取り組んでいる。
インタビュー記事本文
――インドネシアでの脱炭素化の取り組みの現状は?
昨年頃から弊社では、地場の企業様を対象にしたワークショップなどを通して、インドネシアの脱炭素化に向けた現場の状況をお伺いする機会が増えてきました。すでに自社のGHG排出量の算出から公表、具体的な脱炭素施策の導入なども進めている企業様も見受けられる一方、全体としては、課題意識はあるものの日本などと比べると取組の本格化はこれからという印象です。日本では2022年4月よりプライム市場上場企業に対して*TCFDの開示が実質的に義務化されたことにより、各企業が経済成長と環境保護を両立させて取り組むグリーントランスフォーメーション(GX)の取り組みに本腰を入れ始めたと感じています。シンガポールやタイでも同様の動きがみられることから、インドネシアでも今後脱炭素に向けた取組が加速し、それがGX本格化のきっかけの一つになることも考えられます。
* TCFD:Task force on Climate-related Financial Disclosures (気候関連財務情報開示タスクフォース)
――インドネシアの日系企業の動向は?
弊社は主にエネルギーを利用する需要家のお客様とお話をさせて頂くことが多いのですが、GXへのお取組み状況はお客様の置かれた状況によって異なります。製造業を例にとると、在インドネシア日系企業の脱炭素の取組は、GHG排出量の開示やカーボンニュートラルの達成期限を外部から要請され、それに応じる形で推進するケースが多いという印象です。外部からの要請とは、インドネシア政府によって企業に課せられる脱炭素に関わる法律や規制、日本の法律や規制を遵守する日本本社からのGHG削減目標、国際的な評価を意識して国の法律や規制よりも早いスピードで脱酸素に取組むエンドプロダクトメーカーなどに代表されるサプライチェーン上の取引先からの要請、また生産過程でGHG排出量が高い製品に対して輸入関税をかけるEU諸国への対応なども挙げられます。
――脱炭素へのハードルとなる要因は?
インドネシアでは安価に化石燃料が手に入ることから、再生エネルギー由来の電力コストがこの先もなかなか下がらずに経済性の観点で脱炭素の動きにブレーキがかかってしまうことが、ハードルになるのではないかと考えています。また、在インドネシア日系企業においては、日本以上に多忙な駐在員の皆様は日々の優先度の高い課題対応をしており、脱炭素の取組にまで時間を割けないことが挙げられます。これは仕方のないことですが、国際的な傾向に鑑みると、近い将来に外部からの要請が突然厳しくなり、即座の対応を求められる可能性も大いに考えられるため、ご相談を頂いている需要家の皆様には、必要なタイミングで適切に動くための準備や体制づくりをすることをお勧めしています。
――企業からはどのような相談を受け、どのようなサービスを提供していますか?
現段階でよく頂くご相談は「何から始めたらいいのか分からない」や、「自分たちの進め方が合っているのかしりたい」といった方針や戦略に関わるご相談を頂くことが多いです。企業によるカーボンニュートラルの実現は経済性との両立が不可欠です。そのためには、長期的な戦略・ロードマップ策定に加え、確実なGX施策の導入、評価、見直しを行うGXマネジメントサイクルの構築が必要となります。このGXマネジメントサイクルを実現するためのワンストップ支援が我々のサービスの中心となります。もっと簡単な言い方をすると、お客様の脱炭素取組の主幹部門や主担当者様のポジションを、弊社にそのまま一任して頂くといったイメージを持って頂ければよいかと思います。
――御社のGXサービスにおける強みを教えてください。
日本及びASEAN諸国でこれまで豊富なGXサービスの実績を有する弊社では、専門性の高さを強みとしています。インドネシアのお客様にサービスをご提供する際にも、インドネシアの事情を理解した当地の駐在員、インドネシア人スタッフを中心にしつつ、国外で類似する案件を取組んだ専門家がいる場合はプロジェクトメンバとして参画し、より質の高いサービスを提供するためのチームを作ることができます。また、デジタルを用いてのGX推進にも強みをもっており、需要家企業様の経済的負担が少ないデジタルツールを活用した、GHG排出量の算出プロセスの簡略化とミス削減のご提案は好評をいただいておりますし、お客様の御要望に合ったGHG排出量の可視化ソフトの導入なども、定番のサービスとなっています。
――今後の動向、御社の目標についてお聞かせください。
まずはインドネシアの日系企業を中心とした、需要家様方の脱炭素の取組に少しでも貢献できることを第一に考えています。加えて、日本の優れた脱炭素に関する技術や製品をインドネシア市場に紹介・導入し、日本全体の存在感を高めることも重要だと考えています。
よく頂くご意見として、コンサルティング会社は費用が高いというイメージをお持ちになる方もいらっしゃいますが、弊社ではサービスご提案前のお客様とのコミュニケーションを重視しており、お客様がご自身の課題感がクリアになるまでは壁打ち相手としてお話しさせて頂いています。まずはお気軽にお声がけ頂けますと嬉しいです。
企業情報
問合せ先 | PT. ABeam Consulting Indonesia |
電話番号 | 021-526-5660 |
WEBサイト | https://www.abeam.com/ |