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【対談】国際きき酒師に聞く! なぜ高い?インドネシアの日本酒事情

ビールにワイン、日本酒、焼酎……料理をよりおいしく、場の雰囲気をより盛り上げてくれるお酒。そんなお酒、中でも日本酒の値段がインドネシアでは日本よりも数段高いことは、在留邦人ならば誰もが体感していることでしょう。
しかしその理由まで詳しくご存じの方は多くないのでは。
今回は、インドネシアに在住の国際きき酒師のおふたりに、当地での日本酒価格の背景や、今後のインドネシアの酒市場の動向について伺いました。

話者紹介


上村晴夏(うえむら はるか)さん

2019年12月よりインドネシア在住。10年以上のホスピタリティ業界での経験の後、ニューヨークのアルコール輸入会社で日本酒・スピリッツ全般のマネージャーを兼任。
現在はインドネシアのアルコール輸入会社にて、日本酒・スピリッツのマーケティング部署に所属。長い海外生活の中で日本の商品の良さを伝える意義を見出し、アメリカにて国際きき酒師の日本酒資格を取得。

中條一夫(ちゅうじょう かずお)さん

2023年10月よりインドネシア在住。韓国、アメリカ、カンボジア、ベルギーなど計15年の海外勤務の度に外国人に日本食と日本酒を勧めるうちに日本酒への関心を深め、日本で国際きき酒師などの日本酒資格を取得。
著書「できるビジネスマンは日本酒を飲む」(時事通信出版局)および韓国でも著書あり。現在はASEAN日本代表部公使として当地在住。

対談本文

なぜお酒が高価なのか?インドネシアの日本酒流通事情

中條さん
韓国でも日本酒の小売価格は輸送費や関税や酒税や教育税が加わって日本の3倍近くになりますが、インドネシアは更にその倍というイメージです。
韓国では庶民も役人も酒を飲みますが、インドネシアではムスリムが多数派なので酒は贅沢品扱いで税金が容赦なく高いのでしょうか?
上村さん
輸入関税が70%以上のものが贅沢品扱いなのですが、アルコールもそのカテゴリに入っています。アルコール飲料はカテゴリA(ビールなど)、B(日本酒、ワインなど)、C(焼酎など蒸溜酒系)の3つに分けられます。
カテゴリBである日本酒には90%の関税のほか、日本酒一本(720ml)につき約3万8千ルピアの物品税が課税されます。カテゴリC(焼酎など)になると関税が輸入価格の150%、物品税が焼酎一本(720ml)につき11万ルピアになります。この時点で、インドネシアに入荷される日本酒や焼酎が高額である理由が感じ取れますね。
それに加え、輸入社のライセンス取得や、英語での契約書や衛生管理証明書が必要な商品登録、Quotaという年ごとの輸入割当量規制など、様々なハードルを乗り越えての輸入になるのです。

中條さん
インドネシアでは日本酒とワインは同じ酒税カテゴリですが、日本酒は、日本で飲むより割高に感じて注文をためらう人が多いようです。でも、ワインだって当地では割高なのですから、ワインを飲む余裕がある人には是非日本酒も飲んでほしいです。

インドネシア人の日本酒に対する反応は?

中條さん
世界中どこでもワインに関心のある人は日本酒にも関心を示してくれることが多いですが、インドネシアに限らず東南アジアでは日本酒はコメから造った酒ということで親近感をもってもらいやすいと感じます。
上村さん
インドネシアは親日家が多く、観光での訪日経験がある人も増えたことで、以前にも増して日本酒への興味は高まっていると感じます。インドネシア人から輸入商品のリクエストなどをいただくこともあります。
中條さん
お酒を飲むインドネシア人には日本酒を勧めると喜ばれますが、しかし、自分で注文できるかと言うと、銘柄やラベルだけで選ぶのは難しいようです。やはり一緒に飲む日本人のお勧めが大切です。
自分なりのお勧めで構わないので、まずは最初の一杯を口にしてもらえるよう、一緒に飲む日本人にアシストしてほしいと思います。
上村さん
日本酒のラベル標識は、誰でも一目で理解できるようにはまだなっていません。昨今は海外輸出の割合が増加しているなか、JETROが海外向けラベルのフォーマット*を作成するなどの努力もあり、英語表記ラベル対応の蔵も増えましたが、人手とコストの関係でまだ対応できない蔵も多々あります。
日本酒未経験の方が多い中、分かりやすいラベルを目指すことはマーケティングの観点からも大切に感じています。
*参考:Jetro「日本酒標準的裏ラベル制作システム

今後のインドネシア酒市場の展望は?

中條さん
インドネシアは人口の約87%がムスリムですが、総人口が2億8千万人近いので、非ムスリムだけでも約3600万人もいます。これはオランダとベルギーを合わせた人口より多いです**。
実は酒類市場としても十分に大きいということに気付いていない人が多いと感じます。私は日本酒の蔵元に会うたびに「早い者勝ちですよ」と誘惑しています(笑)。
**参考:外務省「インドネシア基礎データ」、「オランダ基礎データ」、「ベルギー基礎データ
上村さん
インドネシアには未だ数えられるほどの日本酒しか輸入されていません。私自身も毎年なるべく多くの新しい日本酒をインドネシア市場に届けられたらと思い、日本に帰った際は蔵回りをしています。
日本酒は日本食以外とも合うお酒であることも認知させていきたいです。アルコール規制に関しても、私がインドネシアに来た4年半前と比べると大分緩和した部分もあるので、上手に規制と付き合っていく方法を模索しています。

基本情報

企業名 Pantja Artha Niaga
住所 Kawasan Industri Pulogadung Jl. Pulo Sidik Blok R. Kav No. 29A Jatinegara, Cakung, Jakarta Timur 13930
電話番号 +62 813-1761-8820
+62-813-1761-8820(WA)
Email haruka@paniaga.com
Webサイト(Pantja Artha Niaga) paniaga.com/
Webサイト(ASEAN日本政府代表部) www.asean.emb-japan.go.jp/
Webサイト(国際きき酒師) ssiintl.jp/