東ジャワ州のトゥバンには食用の土で作られた「アンポ(ampo)」と呼ばれる伝統菓子がある。砂利を含まない黒土を田んぼや湖から採取し濾過、成形し、焼いて作るお菓子で、サクサクとした食感が楽しめる。良質の細かい黒土だけで作られるアンポは風味豊かで、茹でずに食べるとピーナッツのような味がする。ナイフで削って成形するため細長い筒状に丸まっていて、色は炭のように黒い。1kgあたり5000〜1万Rpという安価で売られており、削ったり砕いたりした細かい形状のものもある。
アンポは古くからトゥバン文化の一部であった。地域で開催される伝統行事などでは供物としてよく使用されてきた。トゥバンではアンポは、体に良い食べ物であると考えられてきた。胃を強化し消化器系の健康を維持すると信じられている。胃の痛みを和らげる薬としてアンポを浸した水を飲む人、午後のおやつに必ずといっていいほどお茶やコーヒーと一緒にアンポを食べる人も少なくない。
とはいえ食を取り巻く社会環境の変化と食に関する人々の価値観の多様化が進み、アンポに対する人々の関心は低下している。スナック菓子やケーキなどといったアンポの加工品の開発、トゥバンの土産物としてのPR活動、若い世代への教育など、アンポという食文化を保護する取り組みが行われている。