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「ありがとう」から生まれたチーズ?南スラウェシの「ダンケ」とは?

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チーズといえばヨーロッパを思い浮かべるが、インドネシアにも伝統のチーズがある。それが南スラウェシ州エンレカン発祥の「ダンケ(Dangke)」だ。牛や水牛の乳に青パパイヤの樹液を加えて固めるという製法は、今なお手作業で受け継がれている。

起源は20世紀初頭。家畜の乳を保存するために生まれ、当初は貴族や富裕層だけが味わえた特別な料理だった。やがて客人をもてなす象徴として広まり、今では地域の誇りとなっている。

名前の由来もユニークだ。かつてエンレカンを訪れたオランダ人がこのチーズを食べ、「ダンケ(ありがとう)」と口にしたことから名が定着したという。

作り方は驚くほど素朴。温めた乳にパパイヤの樹液を混ぜ、固まった部分を濾してココナッツの殻やバナナの葉で包む。味わいは濃厚で香ばしく、地元米「プル・マンドティ」との相性が抜群だ。

現在ではエンレカンの無形文化財として正式に登録され、国内外から注目を集めている。市場では真空パックや瓶詰タイプも見られるが、多くの職人は今も伝統の手法を守り続け、「手作りこそが本当の味」と語る。

素朴で力強い旨味をもつインドネシアのチーズ、ダンケ。その一口に、土地の誇りと百年の歴史が詰まっている。