インドネシア随一の観光名所として知られるダナウ・トバとプラウ・サモシール。その美しい絶景の裏には、自然と人間の深い関わりを示す神秘的な伝説が息づいているのである。
はるか昔、スマトラ・ウタラの地にティゴール・サモシールという働き者の青年がいた。深刻な干ばつに見舞われたある日、彼は一匹の不思議な魚を釣り上げた。命乞いをする魚を水へ放つと、彼は約束通り大漁の恵みを授かるようになったのである。やがてその魚はジェリタという絶世の美女に姿を変え、二人は結ばれることとなった。彼女の素性を決して口外しないという固い約束を交わし、息子ウチョク・サモシールにも恵まれ、一家は幸せに暮らしていた。
しかし、悲劇は突然訪れる。ある日、昼食を届けるのが遅れた息子に対し、怒り狂ったティゴールは思わず「魚の子」と罵ってしまったのである。約束が破られたことを知ったジェリタは深く悲しみ、息子と共に村を去っていった。すると、二人の足跡から水が激しく湧き出し、村を呑み込む大洪水を引き起こしたのである。
この大洪水によって形成されたのがダナウ・トバであり、妻子が逃げ延びた高台がプラウ・サモシールとなった。後悔と共に沈んだ青年の名が冠されたこの島は、今も人々に禁忌の重さを伝え続けているのである。
もうひとネタ!
ダナウ・トバは近年ユネスコから「グリーンカード」を獲得しており、注目のスポットである。


















