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コロナ禍のインドネシア 観光より教育が優先では

「コロナ禍未だ収束への道筋明確に見えてこず」のインドネシアで観光分野での「規制緩和」の動きが強まっている。サンディアガ・ウノ観光創造経済相は最近、バリ島に次いでシンガポールに近いリアウ諸島州のバタム島、ビンタン島を優先して「海外からの観光客受け入れの候補観光地」とする方針を相次いで明らかにした。

コロナ禍で低迷したインドネシア経済のカンフル剤として観光産業の復活には大きな期待がかけられ、ジョコ・ウィドド大統領の肝いりもあり、国際的知名度の高いバリ島、そしてシンガポールから海路が便利なバタム、ビンタン両島を手始めに外国人観光客の受け入れを進めることになったようだ。どちらも観光業者、関連事業者には優先的なワクチン接種を進めて万全の態勢で臨むとしている。

バリ島は人気のあるギャニアール県ウブド、バドゥン県ヌサドゥア、デンパサール市サヌールの3地区を優先し、早ければ6月から7月にかけて迎え入れる方向で準備を進めるとしている。さらにバタム、ビンタン両島はそれより早い4月21日を観光客受け入れ開始日としているようだ。

ところがインドネシアの公立の小中高校は依然としてオンライン授業が続いており、生徒や児童が学校に通学して先生と対面で授業を行う予定は、7月の新学期に合わせてということになっている。教育文化省などによると全国の教職員約500万人の優先ワクチン接種を3カ月で済ませて新学期とともに対面方式での学校再開を目指すようだ。

海外からの観光客は空港などの水際でコロナ感染チェックは可能だが、学校再開にあたり教職員はワクチン接種を済ませていたとしても学校で接触する児童・生徒同士、さらに家庭で接する両親や家族、交通機関従業員などへのワクチン接種はどうするのか。

そもそも小学校低学年など低年齢者の感染予防策すら明確になっていない現状で「新学期に合わせて」「優先して教職員にワクチン接種を進める」というだけで対面授業を再開して果たして大丈夫なのだろうか。教育問題は観光より優先課題であり、さらなる時間、予算そして知恵を絞りだす必要があるだろう。

「ジャーマン・スクール」「ブリティッシュ・スクール」そして「日本人学校(JJS)」も各国の新学期に向けた対面授業再開を目指してシミュレーションや地元当局との交渉などで準備を進めているという。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。ジャカルタ在住。