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コロナワクチンのハラル論争 MUIの矛盾する見解が背景

効果的な感染拡大防止策が打てない中、政府の肝いりで着々と進むコロナワクチンの接種。その接種を巡ってイスラム教徒が接種可能かどうかを巡る「ハラル論争」がインドネシアで再燃した。

すでに500万人以上が接種したワクチンだが、1月に始まった中国のシノバック・バイオテックス製ワクチンに加えて、3月からは英アストラゼネカ社製のワクチン接種も始まった。

ところがこれに対して「インドネシア・イスラム法学者評議会(MUI)」が「待った」をかけたのだ。アストラゼネカ社製ワクチンに「豚の肝臓からでる消化酵素の一つであるトリプシンに由来する物質が成分として含まれる」ことから「ハラム(禁じられたもの)」と認定する「イスラム法的見解(ファトワ)」を発出したのだった。

イスラム教徒は豚肉、豚に由来する成分、犬、アルコールなどは禁忌として摂取が禁じられている。これは飲食物だけでなく化粧品、整髪料、歯磨き粉、塗り薬などにも幅広く適用され、「ハラル(許されたもの)」であることを示す「ハラル認証マーク」の有無がイスラム教徒にとって商品を購入する際の大切な指標となっているのは広く知られている。

ワクチンの絶対必要量を補うためにも中国製だけでなくアストラゼネカ社製ワクチンは不可欠で政府は3月に110万回分を輸入、国家食品医薬品監督庁も3月9日に緊急使用許可を出したのだった。

今回のMUIの「ハラムであるというファトワ」はこうした政府、そして医療関係者のワクチン接種促進の動きに水を差す結果となりかねないことから、MUIは「ファトワ」に付言して「ハラムだがイスラム教徒の接種を妨げるものではない」との見解を公にした。

つまり「医療上の緊急事態」であることを念頭に「ハラムではあるがハラルでもある」ともいえる玉虫色の打開策を提示したのだ。これにより、既に西ジャワ州のイスラム寄宿学校などでのイスラム教徒へのアストラゼネカ社製ワクチンの接種が始まったとニュースは伝えている。ただ一般のイスラム教徒の間には戸惑いや疑念も生じているという。

ならばMUI幹部のマアルフ・アミン副大統領などイスラム教指導者が当該ワクチンを公開で接種してアピールすればいいと思うのだが、主な宗教関係者はすでに中国製ワクチンを接種済みという。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。ジャカルタ在住。




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