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中学生11人が川で溺死 インドネシアの水泳教育

実に痛ましい事故が起きた。10月15日午後3時半ごろ、西ジャワ州チアミス県チアミスにあるイスラム学校「ハラパン・バル中学」の生徒150人が郊外活動の一環でチレウール川を徒歩で横断しようとしていたところ、何人かが流されて行方不明となった。

救出された学生もいたが、懸命の捜索も空しく同日午後8時ごろまでに男子8人、女子3人の合計11人が溺死体で発見されたのだった。犠牲者は12歳と13歳で、徒歩で川を横断中に深みにはまって流されたとみられ、11人の大半が泳げなかったという。

インドネシアは日本と同じ島国だが、驚くほど泳げる人は少ない。人口の88%を占めるイスラム教徒は人前で肌をみせることを好まず、プールや海に普段着やTシャツ姿で入っていることを見た人も多いだろう。

しかし問題は宗教ではなく水泳教育にあるといえる。日本は1955年5月11日に瀬戸内海で大型船と衝突した宇高連絡船「紫雲丸」が沈没し、修学旅行中だった広島の小学校の児童ら108人を含む168人が死亡するという悲惨な事故があった。この事故をきっかけに文部省は全国の小中学校にプールの設置と体育の授業に水泳を取り入れるよう指示した。その結果、多くの日本人が水泳を習い、曲がりなりにも泳げるようになったという経緯がある。

筆者が通った東京都立九段高校は1年生全員を千葉外房の校外施設で6日間徹底的に水泳を教え込み、断崖からの飛び込み、隣の湾からの遠泳に全員参加を義務付けるというスパルタぶりだった。泳げない、泳ぎが苦手な学生には飛び込んだ直後から助手(水泳部卒業生)が救い上げて船に誘導し、遠泳ではマンツーマンで可能な限りの距離を泳いで、あるいは浮かんだ後に船にあげる、という徹底したものだった。従って「九段高卒業生に完全な金づちはいない」とまでいわれてきた。

インドネシアでは学校にプールなどまず存在せず、水泳は一部富裕層の子弟がスイミングスクールで習得するだけであり、一般人は大人や子供はもとより海軍は別として警察官や兵士もその大半が泳げないし習う機会もない。でありながら、インドネシアでは海難事故が多発し犠牲者も多い。乗船定員超過や悪天候下での無理な運航が事故原因だが、泳げれば助かった命は多いはずである。若いナディム・マカリム教育文化相が音頭をとって是非とも水泳教育の普及に取り組んで欲しい。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。ジャカルタ在住。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。





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