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MUI内に隠れたJIテロリスト 不可触な闇の解明が必要不可欠

コロナ感染拡大防止対策に懸命のジョコ・ウィドド政権に再び頭の痛い問題が起きた。国際テロ組織アルカイダと関連があるとされるインドネシアのイスラム教テロ組織である「ジェマ・イスラミア(JI)」のメンバーを逮捕したところ、それが「イスラム聖職者(ウラマー)評議会(MUI)」の地方役員だったことが判明したのだ。MUIはイスラム指導者による権威ある組織でマアルフ・アミン副大統領はMUI議長経験者でもある。

2月9日、スマトラ島ジャンビ州ベンクルで国家警察対テロ特殊部隊「デンスス88」がJIメンバー3人をテロ関連法違反容疑などで逮捕した。ところがこのうちの2人がMUIベンクル支部役員だったことが判明した。

MUIを巡っては2021年11月にMUIの上級学者がJIの資金調達に関連していた容疑で逮捕されている。

こうした事例からJIが宗教団体や政党などに組織的に浸透してシンパやメンバーを「洗脳」して組織拡大を画策しているとしてMUIは会員に再び警戒を呼びかける事態になっている。

MUIはインドネシアではイスラム指導者による最高組織として「ナフダトール・ウラマ(NU)」や「ムハマディア」に対しても「格上」のイスラム指導者による組織で、その影響力、指導力は極めて強いとされている。

特にイスラム法学に基づき様々な見解、勧告、布告である「ファトワ」を発出したりイスラム教徒の食事などの禁忌を定める「ハラル(許されたもの)」や「ハラム(許されないもの)」の認証をしたりする最高位の機関でもあるのだ。

それだけにMUI内のJIメンバーの相次ぐ逮捕で明らかなったMUIの実態に、政府も警察も本格的にメスを入れることができない状況となっており、それに対して誰も大きく、公に疑問の声をあげられないところにインドネシアの根強い「不可触(アンタッチャブル)の闇」が存在するといえば言い過ぎだろうか。

警察は2月14日にもJIメンバーのテロリスト4人を中部ジャワで逮捕しており、インドネシア各地にJIが潜伏していることが明らかになっている。

ジョコ・ウィドド政権はテロ撲滅を掲げているだけに、まずはMUIの「闇」解明に本腰を入れて臨むことが必要ではないだろうか。MUIへの発言力、影響力があるはずなのに一向に自らの指導力を発揮しないマアルフ副大統領に気兼ねすることなく。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。ジャカルタ在住。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。