赤道直下の街、ポンティアナックでは、夜明け前からコーヒーの香りが街を包む。ここでの一杯は単なる飲み物ではない。人々が早朝に集い、語らう習慣「ンゴピ・スブー」として、日常生活に深く根付いている。観光客にとっても、地元のコーヒー店を訪れることは欠かせない体験だ。市内のジャラン・メラピやジャラン・ガジャ・マダ沿いでは、早朝から店が軒を連ね、ほぼ満席となる光景が日常となっている。
なかでも象徴的な存在が「ワルン・コピ・アシアン」だ。コーヒー愛好家の間で広く知られるこの店は、店主でバリスタのコー・アシアン氏の存在抜きには語れない。シャツを着ない上半身裸の接客スタイルで知られ、午前4時の開店と同時に常連客が集まる。
店は単なる飲食の場ではなく、市民の交流拠点となっている。コピ・スス(ミルクコーヒー)や半熟卵、スリカヤジャム入りのパンといった素朴で手頃なメニューが、人々の心を和ませる。
この文化の起源は、交易の要衝だったカプアス川沿いにある。商人や労働者、旅人が早朝に集い、一息ついたことが始まりとされる。近代的なカフェが増える中でも、1835年創業のコピ・ジャジャなど老舗は健在だ。ワルン・コピ・アシアンは今も、一杯のコーヒーを通じて街の記憶と人のつながりを守り続けている。
赤道直下に根付く早朝の社交 ポンティアナックのコーヒー文化




















