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インドネシア首都移転への投資見送り ソフトバンクが決断、行く先不透明に

3月11日、インドネシアにとっては衝撃的なニュースが流れた。インドネシア政府が進めているカリマンタン島への首都移転計画に出資の意向を示していたソフトバンクが、出資見送りを決めたというのだ。

ソフトバンクの孫正義会長兼社長は2020年11月にジャカルタを訪問し、ジョコ・ウィドド大統領と会談して首都移転計画への出資方針を明らかにし、首都移転審議会のメンバーに任命された。

ソフトバンク側は投資額に関して金額を明らかにはしていなかったが、インドネシア側は300から400億ドル(約4兆円)規模の投資を期待していたといわれている。

その大型投資案件が見送りとなったことで首都移転計画の行方は不透明になり、インドネシア政府は今後新たに中東や中国からの出資を模索していくとしている。

ソフトバンク出資見送りの報に接したルフット・パンジャイタン調整相(海事・投資)は「孫氏に関する話しはない。彼は外れた」と述べて失望とも怨嗟ともいえないそっけないコメントを残した。

ソフトバンク側もインドネシア側も出資見送りの理由は明らかにしていないが、首都移転計画の財政的裏付けがぜい弱で自国の首都移転にも関わらず外国からの投資を当てにしているやり方、カリマンタン島の大自然を破壊する計画であること、インドネシア財務省などを中心に実現性に対する疑問視が広がっていること、ジョコ・ウィドド大統領自身があまり計画に熱心でないこと、さらには地下鉄延伸、近郊鉄道整備、中国との高速鉄道計画など現在の首都ジャカルタと近郊で進むインフラ整備との整合性など複数の要因が考えられるだろう。

2024年で任期を終えるジョコ・ウィドド大統領は政界を引退し、余生を故郷の中部ジャワで悠々自適に暮らすことを希望しているといわれ、独立100周年に合わせた2045年の新首都完成には関心がないという。

2024年の大統領選や国政選挙さらにその後を視野に入れた現政権の閣僚や与野党党首クラスには、首都移転実現でインドネシアの「夢」を達成し、その勢いで2045年までの先進国入りを目指すというもう一つの「理想」へ強い思いがある。夢を見るのも理想を掲げるのも自由ではあるが、国民置き去り、外国頼みでは実現への道は険しい。ソフトバンクの決断は冷静で正しい判断といえるだろう。

執筆:大塚 智彦
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞シンガポール支局長などを経て2016年からフリーに。
月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などにインドネシアや東南アジア情勢を執筆。ジャカルタ在住。
※本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、PT KiuPlat Media社の公式見解を反映しているものではありません。